2012年3月28日水曜日

今後の運営方針に関して

お久しぶりです。MDIの管理人の加藤です。
当初予定していたように、このプロジェクトは6ヶ月で一応終了とさせて頂きますが、
Facebookで多くの方から続きを読みたいという声が大きかったこともあり、不定期に特別更新を行っていく方針になりました。
更新頻度は下がると思いますが、少しでもディベート界の発展につながれば幸いです。

TANACUP 2011 モーション解説 前編


遅くなりました。きっと加藤は怒っていることと思います。()
今回のタナカップは世界大会に向けた準備ということで、モーションもJapan BPのやや斜め上をいく難しさをイメージして考えました。拙いですが、参考にしてもらえたらと思います

R1
THW prosecute citizens who acted as human shields.

コンテキストとしてはパレスチナやリビアです。ガダフィーがhuman shieldを使ったのは1年ほど前に話題になりました。細かい話は割愛しますが、気になる人はウィキペディア(英語版)で調べてください、けっこう出てきます。
Govとしては、まずpunishではなくprosecuteであることがポイントだと思います。全員を審議なしに無罪にするのではなく、とりあえずcourtに送る必要性はあるという発想からargumentが出てくると思います。
①戦争が長期化し、被害が拡大した。(consequence
指導者を捕まえることがなかなかできないために、周辺地域での紛争は続き被害は拡大します。これはHarm to othersに当てはまると言えます。ここで重要なのはhuman shieldのため、戦争の収束が遅くなっているということを証明することです。当たり前のようで、意外とイラストが重要なので考えてみてください。
human shieldに関わった人の意志は分からない。(incentive
確かに一般人が巻き込まれる形でhuman shieldとなった場合もありますが、そうではないケースもあります。つまり、自由意志で加担したということです。実際、リビアの場合もガダフィー軍の武器庫を守っていた市民もいたようで、courtに送って審議する必要はあるということになります。ここで重要なのは、ガダフィー軍などの攻められている側に加担することがprosecute(この場合はpunishでもいいかもしれません)に値することを証明する必要があります。僕が見たラウンドでは、この点をOppはうまく突いていたように思います(後述)。さて、実際に攻められている時点で、多くの場合は倒すべき悪だと認識しているということが言えます。その悪に加担することは罪だとなります。事例やイラストを引っ張ってください。
warにおけるcivilianの位置づけ
戦争において、一般市民には攻撃を受けないという絶対的な保護が与えられています。これにより戦場において市民は大きなadvantageを利用して、その結果human shieldのようなmilitary operationを阻害することにつながっているという考え方です。そのインバランスを整えることがprosecuteだとも言えます。これも兵士が攻撃できないことで受ける損失を上手くイラストする必要があります。

なんとなく煮え切らない感じですが、Oppに移ります。

Oppとしては、Govと同じくprosecuteまでopposeする必要があります。
Freedom of Expression
human shieldは1つの表現だというアイディアです。たとえ世界を敵に回している独裁者であろうと、市民は誰を支持しても構いません。問題は、ⅰ)支持の方法としてこれが適当かということ、ⅱ)独裁者を支持する権利はあるのかということです。特に、軍が侵攻して来ている状況では市民にできることはかなり限られています。実質的な効果を上げるためには、軍の前に出て命を張るしかないと言えます。さらに、独裁者を打倒しても将来が望ましいとは限らないと言えます。ここでイラクの例は使えると思うので、調べてみてください。
あと小さいですが、自分のpropertyを守るという名目でhuman shieldとなっている人もいると思うので、多くのケースが想定できます。
また、

こんな感じで、細かいイラストやリーズニングを考えていくとクロージングまで残るかなぁというかなり楽観的な思考で出してみました。


R2
THW prohibit credit rating companies from downgrading the debt of countries which are in the process of fiscal reconstruction with the assistance of the IMF.

最初はtechnocracyを出そうとしたのですが、直前の海外大会で出てしまったので、差し替えました。ちなみに最初は「格付け会社ではなくIMFに評価させる」というモーションでしたが、なんか違いが見えにくいという不平・不満により、えーい、完全に禁止じゃー!という勢いで誕生した力作です()
コンテキストとしてはギリシャです。国債の評価によって金利なども決定されるため、社会に与える影響は大きいと言えます。

Govとしては、IMFだけでは不十分という視点が大切です。
ⅰ)人々がまだ国債を買ってくれる。
信頼があるということで、国に投資してくれるということです。個人向け国債には特に影響を及ぼすと思います。
ⅱ)企業の誘致もしやすい。
国債の評価は国の通貨や組織そのものに対する信頼性にも関わっていると考えられます。一定の評価を得られれば、特に海外からの企業がビジネスを展開しやすくなると思います。
ⅲ)長期的にみて国債を返済しやすい。
格下げされないために利率が高くなることを防げるので、国債の返済もしやすくなります。特に経済の再建は長期的な課題となるので、長期的な負担を減らしていくことは大切だと言えます。
ここで、格付け会社の自由を奪っていることに注意しなければなりません。社会に与える影響が大きいから介入はOKというだけでは味気ないので、そもそも格付け会社のビジネスは各国の経済が成り立っている(存在している)から可能だとかいったもっともらしい理由も加えるようにしてもらえると嬉しいです。

Oppとしては、逆に投資が減ってしまうということがベースです。
ⅰ)買い手が正しい情報をもとに判断できない。
例えばAPではIMFが介入している国の国債がBランクで固定されたとしましょう。Bランクかもしれないし、それよりも下かもしれないというあやふやな情報しかアクセスできません。その結果、国債を買わないという選択をとることになります。(ちなみにそれでも買うというのがGovの主張です。)この辺りはイラストが重要です。この発想の前提として、格付け会社の信用はかなり高いということがあります。数年かけて調査を行い、国債の信用度を決定しているようです。日本についても震災、赤字の増加、不安定な政局といった包括的な理由により格下げが決まったそうです。多くの人がこの情報に頼っているからこそ、情報の質は保つ必要性があるということになります。
ⅱ)短期的な資金調達をしにくくなる。
若干うそくさいですが、上述したように評価が低いと利率が高いので、買ってくれる人が増えるというアイディアです。
ⅲ)自由や権利についての話。
会社の評価を付けるという自由が侵害されています。また、市民の知る権利が侵害されています。確かにGovが言うようにfiscal reconstructionが達成できればいいかもしれないが、100%ではありません。もし、他の要因(災害など)で事態が悪くなったらどうでしょう。格付け会社は自社の信頼を失い、国債を買った市民も経済的損失を受けます。これは政府が規制したからです。third partyをこういったリスクにさらすことは正当化できません。なぜなら、IMFの介入が必要となったのはこの投資家や格付け会社の責任ではないからです。自己責任論の延長です。うまくパッケージすると、格好いいargumentになるのではないでしょうか()

クロージングは結構きつそうで、申し訳ありません。

(続きます)

石河敏成 東京大学薬学部3年。Tanacup Chief Adjudicator。 BP Novice 2011、Japan BP 2011, 21st ICU Tournamentでもジャッジブレイク。
Spring JPDU Tournament 2010準優勝、North East Asian Open 2010 EFL準優勝。

2012年3月1日木曜日

Adjudication Core Manual

BP Novice 2011でCAをやった後に、参考になればと思いすべての大会で使えそうなAdjudication Core Manualを作成しました。
大会運営やACをやる際に少しでも皆様の助けになればと思います。


https://docs.google.com/file/d/0B123uRi9tgeuajdpdk9RMDdRN09sWmlFYlVPLS10UQ/edit

2012年1月1日日曜日

アンケートのご協力のお願い

2012年になりました。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

MDIに関してですが、今執行部で今後も続けるか続けないかの議論をしています。

sこで、あなたの声を是非とも聞かせてください!Facebook上で集計をしておりますので、是非ともお願いします。http://www.facebook.com/groups/165600013509961/

期限は1/10です!

Facebook Accountがない方は、marketplace.debate[@]gmail.comに送っていただいても構いません!([]を外してください)

尚、質問は「あなたにとってのMDIの位置づけは?」で、

回答候補は、

全く興味がない。そもそもあったの?

読んだことはあるが、あまり参考にしていない

何回かは読んだことがあり、ほどほどには参考にしている。

2、3回読んだことはあるが、特に何も思っていない。

1週間~2週間に1回読んでおり、参考にしている

更新の度に読んでおり、非常に参考にしているが、なくても構わない。

毎回更新を楽しみにしており、今後も絶対に続けて欲しい

です!

2011年12月31日土曜日

オフシーズンの過ごし方と指導について 後編

【指導について】
練習会などを通して母校を初めとしてなるべく多くの大学に関われるようにしていますが、その際に気をつけていることをここからは書かせていただきたいと思います。
まずは、相手の段階と特徴をしっかりと掴むことだと思います。厳しいことを言うと凹んでしまう子に厳しいことを言っても効果は薄いですし、逆に自己評価が低い・厳しい人を褒めても反発してしまうなどfeedbackは難しいと思います。また、仮に厳しいことを言うにしても、信頼関係のないところでいってもほとんど効果はありません。反感を生むだけです(それが成長のエネルギーになればいいですが、そんなサイヤ人みたいな精神の人ばかりではありません)。なので、なるべくコミュニケーションを取って相手を知り、自分を知ってもらい、自分の人柄を信頼してもらうことを優先して欲しいと思います。
個人的な経験から考えると、伸びるなーという子は質問などを通してよく話していることが多くて、伸び悩むなーという子はそういうことをしない傾向があるのかなと思います。伸びない子はいなくて、時間差があるだけとは思うので、指導の際には諦めずに粘り強く見ていくことが大事だと思います。時には褒め、時には叱りながら信頼関係を作っていけば、話も聞きやすいと思いますし、何をすべきなのかを教える側も把握しやすいと思うので才能だとか変なラベルを貼らずに気長に成長を見てあげて欲しいなと。
例えば、最後の最後で2008年度のESUJを予選1位ブレイクした人は縁もあり、色々と関わってきたんですが、これは練習会以外でも、Mixiのメッセージなどで質問を度々してきて、それを添削して返すということを繰り返すなど地道な努力を繰り返してきた結果が最後に花開いた形だと思います。これは教える側が諦めなければ、何かしらの結果は出せるのかなと思った一番の実例です。

最後にこれはJudgeとして辞めておこうという部分についても触れておこうと思います。色んなJudgeを見ていてDebaterの一番やる気を削いでいると思えるJudgeの発言は「わからない」というものです。理由が明確化されていない「わからない」ほど聞いていて気持ちの悪いものはありません。Debaterとしては20分準備をしっかりして、一生懸命説明した結果が「わからない」の一言ではやってられません。「~がないからわからない」、「英語が早すぎて理解が出来ない」、「現状が~だから、それとの差がわからない」など「わからない」にしても何種類も可能性がありますし、Debaterが次に向かって進めるようにしっかりとDirectionをするのもJudgeの仕事だと思います。

 DebaterにProblem/Causeを提示させて、Solutionを示せと言うならば、JudgeもDebaterのProblem/Causeを提示して、Solutionまで導くことがJudgeのAccountabilityだと私は思います(もちろん、全部教えずに方向性を示して考えさせるのは重要ですが) また、Feedbackの際に「君達、ダメだね」という関連の指摘はやっている側はわかっているので再認識させる必要はよほどの場合じゃない限りは必要ないと思います。弱っているとこに止めをさすよりかは、いかに気持ちを盛り上げてどうやって同じことをしないか、次につなげるかに時間をかけた方がよほど建設的です。自分のイライラをDebaterにぶつけて解消しても何にもならないですし、信頼を失う原因にもなります。百害あって一理なしです。

【まとめ】

一杯書いたので、まとめますと、
1.オフシーズンにも継続的に練習しましょう。差をつける/埋めるためにもです。ラウンドは無理でも個人で出来ることはたくさんあります。

2.指導をする際は相手を知り、自分を知ってもらいましょう。信頼関係第一です。
Judgeなどを通して粘り強く指導すれば、伸びない子はいません。
JudgeのAccountabilityを果たしながら、建設的なfeedbackをしていきましょう。


ということですね。

末筆になりますが、この記事を通して少しでも今後のDebate界の発展につながればと思います。大会などで顔を合わすことがあれば、またよろしくお願いします。

出利葉貞弘
Gemini cup(2005)3位、The関西(2006)優勝、濱口杯(2006)3位、秋JPDU(2006)ベスト16、ICU-T(2008)ベスト16、Golden cup(2008) 優勝、Golden cup(2009)3位、ディベートのすすめ(2009)ベスト8、The関西(2009)3位、東工大杯(2009)ベスト8、BP novice Kansai 2nd Best adjudicator (2011)/Breaking adjudicator(本選不参加)

2011年12月26日月曜日

オフシーズンの過ごし方と指導について 前編

 このブログを呼んでいるほとんどの方々、はじめまして。知っている方はお久しぶりです。今回、ブログに寄稿させていただくことになった出利葉貞弘(いでりは さだひろ)と申します。

 ここ数年は、あまり関東の大会には行けてないこともあり、ほとんどの方が知らないと思いますので簡単に自己紹介から始めさせてもらいます。20083月に神戸大学を卒業した身(今の4年生が大学に入学した年です)で、卒業後もほそぼそと母校の神戸大学での指導を中心に活動をさせてもらっています(経歴などは最後に載せていますので興味があれば、ご覧ください)。今回は加藤君から何か書いてくださいというスルーパスを受けて寄稿させていただくことになりました()
 テーマが自由ということで、何を書くか迷いましたが、オフシーズンの過ごし方と指導について少しずつですが、書かせていただきたいと思います。

 【オフシーズンの過ごし方】
 凌霜杯、Japan BPが終わり、Tanacupを残して年内の国内大会は終了しました。世界大会に行く人は1月初旬まで大会シーズンですが、大半の方はオフシーズンに入っていると思います。春からの大会シーズンの再開を前に「旅行に行こう、バイトをしよう、テスト勉強だ…etc」と色んなことをしたくなりますが、大会で結果を出したいなら継続的な練習は欠かさずに毎日しておきましょう。11motionのプレパ練習やPMスピーチ練習など短い時間で出来ることを欠かすか欠かさないかで大会シーズンが再開したときに大きな差が出ます。というのも、「何もしない」期間を作ってしまうとリハビリで感覚を取り戻すのに時間がかかってしまって、元の実力に戻ってから初めて上乗せの練習効果が見られることになるので継続的なことをしてきた人に比べて成長に時間的な制約がついてしまうからです。

 ここからは、個人的な見解ですが、多くの人が「何もしない/出来ない」時期に差をつける・埋めることが今の結果に満足できていない人には必要なのだと思います。大会前に練習するのは当たり前ですが、この時期は参加する人は全員練習をしているわけで、努力をしてもなかなか差が埋まりません。一方で、現状で結果が出ている人でもオフシーズンに練習をしない人もいる訳であって、この時期に力を伸ばすことは差を一気に埋めることにつながります。

 実体験を述べると、私は絶対にブレイクするぞと強い気持ちを持って出た2年生の11月のJPDU Tournament(今でいうBP noviceの時期にあった大会)で惨敗をしてしまい、3年のJPDU Tournament(9)で巻き返しを図ろうと強く決心した時期がありました。そのためにまずは関西で開催されるThe関西という大会で絶対に優勝しようと思い、オフシーズンを全て返上して「時事/古典リサーチファイルの増強」、「弱点である英語の勉強」などの努力を12月のオフシーズンから大会が開催される3月までひたすらに続けました(もちろん、遠征を稼ぐバイトであったり、テスト勉強はしていました)。当時の神戸大学の同期たちがインターンに行ったり、短期留学にいったりとラウンドが出来ず、個人でゴリゴリひたすら練習をしていて凄く苦しかったのを覚えてます()

 結果としては、パートナーが最高に優秀だったこともあり、The関西では優勝することが出来ました。大会のmotionは当時の時事ネタが出まくったのですが、リサーチで全て網羅しており、崩れることもなく勝ち進めることができました。

 ここでの自信が深まり、上記の努力を9月の引退試合であるJPDU Tournamentまで続けることができ、最終的にはしっかりとブレイクをすることは出来ました。個人でもそれまで全く縁のなかったSpeaker Prizeを取るなどある程度満足できる形で現役生活を終えることになりました(その後、ESUJに急遽出ることになり、そっちは大コケしましたが汗)

 この経験もあり、神戸の後輩にも言い続けていることですが、「練習をしない時期」は極力少なくすることが自分の望む結果を得るための近道なのかなと私は思っています。オフシーズンはその時期が一番出やすく、力関係が逆転するきっかけになってしまいます。リフレッシュも大事ですし、他のことも大事なというのもわかります。ただ、結果を出したいと心から思うのであれば、その中でも継続した練習を心がけることなのかなと思います。特に、オフシーズンは時間があるからこそ弱点の補強(知識不足ならリサーチ、スピーチ力ならスピーチ練習など)をすることが可能な唯一に近い時期です。今自分に何が足りていないのか、それを埋めるには何をすべきなのかをしっかりと考えてオフシーズンを過ごしてくれればと思います。

(続きます)

出利葉貞弘 神戸大学国際文化学部卒業(2008)
Gemini cup(2005)3位、The関西(2006)優勝、濱口杯(2006)3位、秋JPDU(2006)ベスト16 ICU-T(2008)ベスト16Golden cup(2008) 優勝、Golden cup(2009)3位、ディベートのすすめ(2009)ベスト8The関西(2009)3位、東工大杯(2009)ベスト8 BP novice Kansai 2nd Best adjudicator (2011)/Breaking adjudicator(本選不参加)

ユーロ一考 Part 3

 常々、新聞や海外メディアを見ているとEUやユーロに関しての話題が尽きませんね。メルケル首相ががんばっているようなので、僕も頑張りたいと思います。

して、前回はユーロの慨論について説明させていただきましたが、次はギリシャ危機に関する内容です。以下はなすべきことは、ギリシャ危機はなぜ起こったのかということとそれにユーロは関係したのかの2点です。

最初のギリシャ危機の原因から。これに関しては、多くの報道でなされているとおりギリシャ政府の怠慢です。ギリシャでは、国民の1/4が公務員であったり(票を獲得するために失業者を公務員にするというあまりに近視眼的な政策の結果です)、また定時出社ボーナスに象徴されうる行政コストの無駄がありました。世界各国に共通に見られる現象ですが、遅れたグローバル化への対応です。製造業をはじめとして、ギリシャ経済を支える産業が育っていませんでした。

なぜこのような事態になったのか。このブログの読者であるならば、もうご存じですよね。現世代の人々は、未来世代のことを考えずに、無駄な公共事業で景気良くしようとしたり、社会保障を充実させようとしたりして、向う見ずな財政赤字になってしまう傾向にあります。

*一つレトリックを紹介しましょう。上記のような事態を許容あるいは加速させる政治家のことをPoliticianと呼ぶ一方で、将来のことを考え公正に国益を追求する政治家のことをStatesmanと呼んだりします。さて、日本にstatesmanはいるのでしょうか。あるいはstatesmanを育てようとする国民はいるのでしょうか。

話がそれましたが、次の疑問です。ユーロと財政赤字の関係です。端的に言うならば、ユーロは財政再建を先送りにさせたと言えます。なぜなら、以前のブログで紹介した通り、ユーロは各国に何らかの経済的利益を享受させ、短期的には経済状況が改善されうるからです。ユーロという利益で財政問題と言う構造的な問題をごまかそうとしたわけですね。それを象徴する政治家の行動は、ドイツ政府との交渉の時に起こりました。具体的には、ギリシャ財政が破たんする可能性あった時、ギリシャの政治家は救済を検討するドイツに対して、危機による影響を政治的カードとして行使し、上記にあげた放漫財政を見逃すよう交渉したのです。流石にメルケルさんもあきれたようです(苦笑)

*このようなある制度・政策がある行動のインセンティブを変化せることを経済学ではmoral hazardと言います。実際的には、否定的な結果を招くことが多いので、道徳の劣化と言われていますが、東大の岩本先生曰く誤訳だそうです。非常に有益なロジックなので、いずれブログで説明したいと思います。

一方で、ユーロがなかったとすれば、財政赤字が改善される可能性が上がると言えなくもないでしょう。なぜなら、ギリシャ政府は緊迫する財政問題に対して何らかの行動をうつインセンティブを持つ、つまり正しくリスクを認識しそれにもとづいて適切な行動をとるようになるからです。ただユーロがなかったら、ギリシャがつぶれなかったかどうかは神のみぞ知る領域であるということは言及しておきます。

以上がギリシャ危機とそれに関係するユーロの説明です。

次は、これからのユーロのあるべき姿です。もう鋭い方はお気づきでしょう。ユーロの経済的利益を各国に享受させ、また財政破綻のリスク及び各国への影響を最小化させるためには、「財政規律の堅守」です。民主主義の構造的な問題はさておき、ユーロによる財政構造への悪影響に関しては、これで対応していくことがユーロと言う枠組おいては次善の策です。メディアで報道されていよう、財政赤字をGDPの数パーセントに抑えることを義務付けるようにユーロは動いています。個人的にもこれにまさる代替策はないと思います。

*今回のブログの根拠の一つとして本の著者・田中素香氏はこの財政規律の堅守について1年ぐらい前から指摘しています。まさに先見の明です。また、歴史的背景を述べるならば、過去においてユーロはユーロ拡大を足早に達成するために、財政規律に関しての取り決めがあったのにもかかわらず、ギリシャを始めとした各国の財政状況に目をつむり、また主要国である独仏でさえ、財政規律を破ってきたという歴史的事実があります。だから、PIIGSと呼ばれるような財政問題に対して、極めて問題を抱えた国がユーロに入れたわけです。

*余談となりますが、ノービスでユーロに関するこのような問題意識を取り入れた評価に値するモーションがでましたね。誰かは特定できませんが、モーション作成にかかわっていたT大のK藤くんが付箋だらけのユーロに関する入門書を呼んでいたと記憶しています苦笑

Asbest君「おいおい、結局ユーロは良いシステムなんじゃねーかよ。それじゃ、何でユーロ反対者はあんなにいるんだよ。デメリットもちゃんと説明しろよ。それとも分からないのかな?笑」

・・・・・冷静に行きましょう。

このような財政規律をコントロールするシステムを内包したユーロは、各国の国家主権を著しく侵害していると言えるでしょう。皆さまがクッキーカッターの一つとして、ご存じの通り、国家こそが国民の利益を追求できる最も適切な主体であり、それが国家主権の根拠となっていて、これは否定できないでしょう。これを言うだけでもそれなりにスタンスが構築できます。

ここまで分かれば、及第点ではありますが、はたして上のように各国の主権がいわば暴走し、自国及び他国にまで影響を及ぼしている中で、各国の主権を守る意義はどこにあるのでしょうか。

一つは、既に以前のブログで説明しましたが、5年や10年の景気循環を加味した財政運営は経済的に理に適っています。不景気にはより多くの財政出動、好景気には財政改善。

これだけでは味気ないので、付加価値を加えましょう。独仏などではなく、東欧や南欧諸国といったまだまだ経済途上国には、財政規律を破った経済政策が正当化されます。なぜなら、長期的にみるならば初期の経済投資が長期の発展につながる可能性があるからです。ディベート界にも膾炙しているケインズの乗数効果で説明できると思います。もちろん、自動的にそうなれば開発経済学者などの学者は苦労しないのですが、歴史的にもマーシャルプランの恩恵を受けたヨーロッパ先進国があとになって成功したのは、一時的な財政赤字というリスクを背負ったゆえです。

Asbest君「じゃー、財政破綻させない範囲内で財政規律を各国のGDPに合わせて柔軟に変えればよくね?先進国にはきつく、途上国にはゆるくみたいな、、、、」

極めてディベートが分かっている人のcleverな質問です。

先進国においても、国の政治的社会的利益を追求するために、ある種財政赤字を抱えた財政運営も正当化されます。例えば、北欧諸国が良い例でしょう。彼らは国策として、社会保障を充実させています。これから少子高齢化が進み、財政運営が厳しくなってくると思いますが、彼らに社会保障を諦めさせ、財政運営を健全化することが適切な判断でしょうか。おそらく、否でしょう。充実した社会保障によって、コミュニティや文化が形成され、一説にはそのことが経済活動を活性化させているとも言われています。その結果、他国からもうらやましがられる国へと成長してきたわけです。

このように、先進国や途上国に関わらず、財政規律を課すことは非常に国益を損なう可能性があります。

以上が、ユーロのこれからに関する論評です。はたして、皆さまはどのように思ったのでしょうか。またどうすればこれらの話を活かして、より磨かれた議論ができると考えたでしょうか。答えは皆さまの頭の中にあると思います。極めて論争の余地のあるモーションです。慎重に考えてみてください。

私見としては、国際連盟がその欠陥を克服して、安全保障に多大なる国際連合を設立した歴史があった通り、ユーロもその構造的欠陥を克服して、ユーロ圏内に繁栄をもたらすことを切に望んでいます。

最後に、弁明を。お気づきだとは思いますが、僕のブログは誤字脱字が散見されます。院生としては、恥ずかしい限りですが、時間の制約があってまともに見返せない(+K藤くんが急かす苦笑)ので、ご勘弁ください。内容に関しては、なるべく時間をかけてねっているつもりなので、参考にしていただければと思います。

石渡慧一 
国際基督教大学卒業、東京大学公共政策大学院修士1年。2009年度ICUDS部長。Australs 2009 ESLブレイク、 All-Asian 2008 EFLブレイク(なお、この年の北東アジア参加者の中で1位)、NEAO 2009 EFL ブレイク、NEAO 2010 ジャッジブレイク