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2011年12月26日月曜日

ユーロ一考 Part 3

 常々、新聞や海外メディアを見ているとEUやユーロに関しての話題が尽きませんね。メルケル首相ががんばっているようなので、僕も頑張りたいと思います。

して、前回はユーロの慨論について説明させていただきましたが、次はギリシャ危機に関する内容です。以下はなすべきことは、ギリシャ危機はなぜ起こったのかということとそれにユーロは関係したのかの2点です。

最初のギリシャ危機の原因から。これに関しては、多くの報道でなされているとおりギリシャ政府の怠慢です。ギリシャでは、国民の1/4が公務員であったり(票を獲得するために失業者を公務員にするというあまりに近視眼的な政策の結果です)、また定時出社ボーナスに象徴されうる行政コストの無駄がありました。世界各国に共通に見られる現象ですが、遅れたグローバル化への対応です。製造業をはじめとして、ギリシャ経済を支える産業が育っていませんでした。

なぜこのような事態になったのか。このブログの読者であるならば、もうご存じですよね。現世代の人々は、未来世代のことを考えずに、無駄な公共事業で景気良くしようとしたり、社会保障を充実させようとしたりして、向う見ずな財政赤字になってしまう傾向にあります。

*一つレトリックを紹介しましょう。上記のような事態を許容あるいは加速させる政治家のことをPoliticianと呼ぶ一方で、将来のことを考え公正に国益を追求する政治家のことをStatesmanと呼んだりします。さて、日本にstatesmanはいるのでしょうか。あるいはstatesmanを育てようとする国民はいるのでしょうか。

話がそれましたが、次の疑問です。ユーロと財政赤字の関係です。端的に言うならば、ユーロは財政再建を先送りにさせたと言えます。なぜなら、以前のブログで紹介した通り、ユーロは各国に何らかの経済的利益を享受させ、短期的には経済状況が改善されうるからです。ユーロという利益で財政問題と言う構造的な問題をごまかそうとしたわけですね。それを象徴する政治家の行動は、ドイツ政府との交渉の時に起こりました。具体的には、ギリシャ財政が破たんする可能性あった時、ギリシャの政治家は救済を検討するドイツに対して、危機による影響を政治的カードとして行使し、上記にあげた放漫財政を見逃すよう交渉したのです。流石にメルケルさんもあきれたようです(苦笑)

*このようなある制度・政策がある行動のインセンティブを変化せることを経済学ではmoral hazardと言います。実際的には、否定的な結果を招くことが多いので、道徳の劣化と言われていますが、東大の岩本先生曰く誤訳だそうです。非常に有益なロジックなので、いずれブログで説明したいと思います。

一方で、ユーロがなかったとすれば、財政赤字が改善される可能性が上がると言えなくもないでしょう。なぜなら、ギリシャ政府は緊迫する財政問題に対して何らかの行動をうつインセンティブを持つ、つまり正しくリスクを認識しそれにもとづいて適切な行動をとるようになるからです。ただユーロがなかったら、ギリシャがつぶれなかったかどうかは神のみぞ知る領域であるということは言及しておきます。

以上がギリシャ危機とそれに関係するユーロの説明です。

次は、これからのユーロのあるべき姿です。もう鋭い方はお気づきでしょう。ユーロの経済的利益を各国に享受させ、また財政破綻のリスク及び各国への影響を最小化させるためには、「財政規律の堅守」です。民主主義の構造的な問題はさておき、ユーロによる財政構造への悪影響に関しては、これで対応していくことがユーロと言う枠組おいては次善の策です。メディアで報道されていよう、財政赤字をGDPの数パーセントに抑えることを義務付けるようにユーロは動いています。個人的にもこれにまさる代替策はないと思います。

*今回のブログの根拠の一つとして本の著者・田中素香氏はこの財政規律の堅守について1年ぐらい前から指摘しています。まさに先見の明です。また、歴史的背景を述べるならば、過去においてユーロはユーロ拡大を足早に達成するために、財政規律に関しての取り決めがあったのにもかかわらず、ギリシャを始めとした各国の財政状況に目をつむり、また主要国である独仏でさえ、財政規律を破ってきたという歴史的事実があります。だから、PIIGSと呼ばれるような財政問題に対して、極めて問題を抱えた国がユーロに入れたわけです。

*余談となりますが、ノービスでユーロに関するこのような問題意識を取り入れた評価に値するモーションがでましたね。誰かは特定できませんが、モーション作成にかかわっていたT大のK藤くんが付箋だらけのユーロに関する入門書を呼んでいたと記憶しています苦笑

Asbest君「おいおい、結局ユーロは良いシステムなんじゃねーかよ。それじゃ、何でユーロ反対者はあんなにいるんだよ。デメリットもちゃんと説明しろよ。それとも分からないのかな?笑」

・・・・・冷静に行きましょう。

このような財政規律をコントロールするシステムを内包したユーロは、各国の国家主権を著しく侵害していると言えるでしょう。皆さまがクッキーカッターの一つとして、ご存じの通り、国家こそが国民の利益を追求できる最も適切な主体であり、それが国家主権の根拠となっていて、これは否定できないでしょう。これを言うだけでもそれなりにスタンスが構築できます。

ここまで分かれば、及第点ではありますが、はたして上のように各国の主権がいわば暴走し、自国及び他国にまで影響を及ぼしている中で、各国の主権を守る意義はどこにあるのでしょうか。

一つは、既に以前のブログで説明しましたが、5年や10年の景気循環を加味した財政運営は経済的に理に適っています。不景気にはより多くの財政出動、好景気には財政改善。

これだけでは味気ないので、付加価値を加えましょう。独仏などではなく、東欧や南欧諸国といったまだまだ経済途上国には、財政規律を破った経済政策が正当化されます。なぜなら、長期的にみるならば初期の経済投資が長期の発展につながる可能性があるからです。ディベート界にも膾炙しているケインズの乗数効果で説明できると思います。もちろん、自動的にそうなれば開発経済学者などの学者は苦労しないのですが、歴史的にもマーシャルプランの恩恵を受けたヨーロッパ先進国があとになって成功したのは、一時的な財政赤字というリスクを背負ったゆえです。

Asbest君「じゃー、財政破綻させない範囲内で財政規律を各国のGDPに合わせて柔軟に変えればよくね?先進国にはきつく、途上国にはゆるくみたいな、、、、」

極めてディベートが分かっている人のcleverな質問です。

先進国においても、国の政治的社会的利益を追求するために、ある種財政赤字を抱えた財政運営も正当化されます。例えば、北欧諸国が良い例でしょう。彼らは国策として、社会保障を充実させています。これから少子高齢化が進み、財政運営が厳しくなってくると思いますが、彼らに社会保障を諦めさせ、財政運営を健全化することが適切な判断でしょうか。おそらく、否でしょう。充実した社会保障によって、コミュニティや文化が形成され、一説にはそのことが経済活動を活性化させているとも言われています。その結果、他国からもうらやましがられる国へと成長してきたわけです。

このように、先進国や途上国に関わらず、財政規律を課すことは非常に国益を損なう可能性があります。

以上が、ユーロのこれからに関する論評です。はたして、皆さまはどのように思ったのでしょうか。またどうすればこれらの話を活かして、より磨かれた議論ができると考えたでしょうか。答えは皆さまの頭の中にあると思います。極めて論争の余地のあるモーションです。慎重に考えてみてください。

私見としては、国際連盟がその欠陥を克服して、安全保障に多大なる国際連合を設立した歴史があった通り、ユーロもその構造的欠陥を克服して、ユーロ圏内に繁栄をもたらすことを切に望んでいます。

最後に、弁明を。お気づきだとは思いますが、僕のブログは誤字脱字が散見されます。院生としては、恥ずかしい限りですが、時間の制約があってまともに見返せない(+K藤くんが急かす苦笑)ので、ご勘弁ください。内容に関しては、なるべく時間をかけてねっているつもりなので、参考にしていただければと思います。

石渡慧一 
国際基督教大学卒業、東京大学公共政策大学院修士1年。2009年度ICUDS部長。Australs 2009 ESLブレイク、 All-Asian 2008 EFLブレイク(なお、この年の北東アジア参加者の中で1位)、NEAO 2009 EFL ブレイク、NEAO 2010 ジャッジブレイク

2011年12月20日火曜日

ユーロ一考 Part 2


①    経済先進国の輸出増加
ギリシャやポルトガルといったもはや昔はすごかったけど、今は多少調子が悪くなってしまった国のベネフィットもある一方で、ドイツをはじめとした経済先進国にもベネフィットがありました。それは輸出の増加です。なぜなら、ユーロ導入後はそれ以前に比べて通貨価値は割安になったので(表現が適切ではないですが、マルク安になったということ)、ドイツ企業の輸出はうなぎ上りに伸びました。リーマンショック以降、先進国はマイナス経済成長率が多い中で、ドイツは2・3%といった安定した成長率を誇っています(僕自身は、その事実がメルケルの長期政権の一因なのかなと邪推したりしていますが….)

*ご存じのように、イギリスはユーロに参加していませんが、ある意味賢くソロバンを弾いたといえるでしょう。というのは、イギリスはそのGDPの多くが銀行業によるもので、製造業が占める割合が大きくなく、ユーロ加入による輸出増加という恩恵が少ない一方でその負担(安定化基金への支出やユーロに入ることによる金融政策の制約)を背負う必要がないですから。ポンドへのプライドや大陸文化に対する島国文化の反抗というところが予期せぬ幸福を招いたやもしれませぬが。

②    基軸通貨としての地位確立
 ただ単純にユーロの通貨量が増えたことや①②③のメリットのおかげで域内経済が活発化した結果、世界経済におけるユーロの地位は高まりました(「地位」というのは、政治的パワーみたいなものです)このおかげで国際社会におけるヨーロッパの政治的発言力は増しました。
*お気づきではあると思いますが、これは非常に曖昧なベネフィットです。というのはまだまだ健在のドルや急成長の元、なぜか安心できる通貨である円(苦笑)がいる中でユーロのプレゼンスはどこまであるのか分からないのと、政治的発言力によってどのような効果があるのかは未知数だからです。一流の海外ディベーターなんかはさらっとそれっぽい単語を使ってそれっぽく見せてしまうようなポイントではありますが、そこらへん自信がない日本人ディベーターは、①②③をもってどれだけユーロが圏内にメリットもたらしたかを分かりやすく説明して、さらっとユーロのプレゼンスがあがってユーロの政治的発言力が上がりますとかいえば、cleverだと思います。
以上が、ユーロのメリットです。欧州行政局(?)というところのデータによればユーロ導入後の1500万人ほどの雇用創出効果があったそうです(ちょっとデータの出どころが怪しいので絶対にディベートで使わないでくださいね)

さて次は、ギリシャの財政問題です(ちょっと疲れたので、休憩します笑)

石渡慧一 
国際基督教大学卒業、東京大学公共政策大学院修士1年。2009年度ICUDS部長。Australs 2009 ESLブレイク、 All-Asian 2008 EFLブレイク(なお、この年の北東アジア参加者の中で1位)、NEAO 2009 EFL ブレイク、NEAO 2010 ジャッジブレイク

2011年12月5日月曜日

ユーロ一考 Part 1

 どうも、石渡です。

 先日、W大学のS田くんとK井くんとこのブログについて話す機会がありました。2人からは、「本当に役立っています」とありがたい言葉を頂き、本当に励みになりました。話していて気づいたのですが、もう少しディベートでどう使うか意識しつつ行きたいと思います。
 また、T大学のT永くんとも話していて、改めて気付かされた皮肉な真実がありました。それは「ディベート界の技術や環境は進歩していても、経済(学)の知識は全く進歩していない」ということでした。
 どうでもいい前置きでしたが、今回のテーマはユーロです。今、世界で熱く議論されているユーロです。おそらく、ワールドを含めた近い海外大会でもそれに関連したモーションが出ると予想しています。もはや、リーマンショックの時と同様にここまでホットなイシューを議論しないディベートは、現実問題に対して考えられうる解決策を議論するというディベートの目的の一つを失ってしまい、ただの机上の空論になりさがってしまうんじゃないかとさえ(極端ではありますが)思ってしまいます。
 とはいえ、ギリシャの財政問題に端を発するユーロに関する議論は成熟しているとは言えず、またこれからもギリシャの状況は予断を許さない状況であるので、僕自身も明確な結論を持ち合わせていません。ということで、以前よりユーロの研究者であった田中素香さん(ユーロ支持者)とジャーナリストの有田哲文さん(どちらかというと批判的な方)の本に依拠しつつ、論を進めたいと思います。
 構成としては、始めにユーロのメリットを説明し、次にギリシャの財政問題を簡単に俯瞰して、最後にギリシャ問題を絡めたユーロのあるべき姿というのを分析していきます。

 ユーロのメリット
ユーロが何なのかについての基本的な知識に関してはウィキペディアや池上さんらに譲るとして、ここではユーロのメリットについて説明します。

①    域内経済の活発化
②    通貨の安定化
③    経済先進国の輸出増加
④    基軸通貨としての地位確立
(参考:田中素香『ユーロ』)

①    域内経済の活発化
これは、2つの観点から。
イ、個人消費の活発
今までは、マルクやフラン、ドラクマ(ギリシャの通貨)などがユーロ圏内で存在し、消費が思うように伸びませんでした。理由は手数料と為替相場リスクです。前者については例をあげましょう。フランス人が安いドイツ製品を買おうとした場合、彼は両替店で手数料込でマルクを買った後にドイツ製品をかうということになりますが、結果的にはそのドイツ製品が高いということケースもあります。それゆえに、消費が伸び悩みます。しかし一方で、ユーロで統一された後は、そのような手数料はありませんから、遠慮なくドイツ人でもギリシャ人でもポルトガル人でも安いドイツ製品を買えますので、消費が伸びます。
 もう1つの為替相場リスクに関して。いつでも為替相場(通貨の交換比率)は変わるリスク(可能性)というものを抱えています。最近の日本を考えてみると容易に理解できるでしょう。例えば、日本の円はこれから(極論ですが)70円さえも下回る可能性だってあります。その時、旅行者や輸入業者はどう考えるでしょうか。一番良い為替を待つために、消費(交換・輸入など)を控えるでしょう。その結果、消費が落ち込みます。しかしながら、ユーロが導入されてしまえば、消費は伸びます。なぜなら、ユーロ圏内でユーロは安定していて、為替リスクを持っていないですから(もちろん、ユーロ対ドル、円については依然と同様に為替相場リスクは内在していますが)

②    通貨の安定化
通貨の安定化というのは、通貨の価値が急激に上がったり、下がったりすることが起こりにくくなるということです。アジア通貨危機の時に明らかになったように一時的な経済上の変化や投資家の行動によって、通貨価値というのは乱高下します(このことがアジア共通通貨の推進の大きな理由だったりするのは余談で)
複数存在す通貨を一つにまとめ、「強いユーロ」になるという詳しいプロセスは、国の信用力といった曖昧な概念や外貨準備高といった専門用語などを使う必要があり、おそらくディベートで求められうるマターを超えると思われるので、説明しませんが、複数存在する通貨を一つにまとめ、「強いユーロ」を作ることで、今まで通貨が不安定であった国に投資を呼び込みます。なぜなら、投資家は投資した企業の国の紙幣(通貨)が紙くずになることを今まで恐れていたからです。その結果、ポルトガルやイタリア、アイルランド、ギリシャ(頭文字をまとめてPIIGSと言われています)にて、大きな投資効果がありました。余談になりますが、オリンピック時にはその経済効果と相まってアテネにはポルシェなどの外車がありふれていたようです。
*PIIGSという単語をみて、何か疑問に思った人がいるでしょうが、その疑問の解消はあとで解消します。


(続きます)


石渡慧一 
国際基督教大学卒業、東京大学公共政策大学院修士1年。2009年度ICUDS部長。Australs 2009 ESLブレイク、 All-Asian 2008 EFLブレイク(なお、この年の北東アジア参加者の中で1位)、NEAO 2009 EFL ブレイク、NEAO 2010 ジャッジブレイク

2011年11月16日水曜日

マクロ経済入門 Part 2

少し専門的になってしまったので、個別具体的にモーションを使って考えてみましょう。モーションは核燃料廃棄物の国際取引です。それぞれの類型化されたケースに当てはめてみましょう。

a. Win-Win
環境を大事にする先進国にとっては、多少のお金を失ってもこの取引はwinである一方、環境より経済を優先する途上国にとっては、経済発展のためのお金がもらえてwinです。

b. Win-Lose
aのようなことがあるとはいえ、この取引自体が強制されたものか知れません。力関係がアンバランスな先進国と途上国の間にはよくあることです。つまり、本当は周辺地域への悪影響が懸念される核燃料廃棄物を受け入れなくなったのに途上国が受け入れざるを得ないというケースです。

c. Win-Win-Lose
2国間の取引に不公正さがないように、第3者機関が監視したり、周辺地域に影響がないように、セメントで固めて地中奥深くに埋めたり、また周辺地域住民の合意を取ったりしました。その意味では、win-winなのですが、はたして未来の世代はwinでしょうか。時間がたてば、悪影響が積み重なることだってありますし、たとえばその影響がなかったとしてもその核燃料廃棄物があること自体を認めないかもしれません。
他の例としては、環境問題です。例えば炭素税で環境を守りつつ、経済も多少ケアするみたいなスタンスは、未来世代にとってはwinではないかもしれません。なぜなら、未来においてはつもりにつもった二酸化炭素で環境がめちゃくちゃになることだってありますから。そういう意味では、自動車自体を禁止することのみが彼か未来世代にとっての唯一の解かもしれません。

以上がモーションを例にしてみたところでの3つの類型化された状況の説明です。印象としては、aの時はほったからしで、loseを避けるためにはbの時は多少政府が関与して、cの時はRadicalに政府が関与しないといけなそうですね。

*専門的な話ですが、「主流」である新古典派経済学者の多くは、政府が介入しない市場を肯定します。市場の失敗(≒lose)がある時のみ政府の介入を正当化しますが、基本的には競争によって、みんながwin-winになることを期待しています。偏った私見としては、ディベート的にも競争が行われる市場を否定すること及び競争を阻害する市場の介入を正当化することはそれなりの理由をもってDefendするしかないと思います。

最後に、今回のような少し変わったブログを書いた理由を添えて、終わりとします。

その理由というのは、上のような見方をするとディベートがやりやすくなると思ったからです。具体的に言うのは皆さんが考える機会を奪ってしまうので詳しくは遠慮しますが、具体例でいきましょう。例えば、外食店で初めて食事をするときは、情報の非対称性がるので、win-loseということが起こりえます。ただ皆さまはそういうときどうするどうでしょうか。僕の場合は、食べログで調べてからその外食店に入ります。そうすれば、win-winになる可能性があがりますから。このように政府の力を借りずして、多くの場合win-winになることがあるようです。
抽象的ですが、そんなことを頭に入れておくと新しいディベートの見え方がするのではないかと思います。

以上です。失礼します。

石渡慧一 
国際基督教大学卒業、東京大学公共政策大学院修士1年。2009年度ICUDS部長。Australs 2009 ESLブレイク、 All-Asian 2008 EFLブレイク(なお、この年の北東アジア参加者の中で1位)、NEAO 2009 EFL ブレイク、NEAO 2010 ジャッジブレイク

2011年10月21日金曜日

マクロ経済入門 Part 1

石渡です。

 ディベートの大会とかに参加した時は草の根運動をして、このブログの評判を聞いているつもりですが、東女の子からは「もっと教えてください(執筆スピード、遅いよ)」とかICUの子からは「英語だと読みやすいんですけど(英語で書けよ)」とかいう声を頂いています。最大限、反映していきたいと思いますので、どんどん言ってください。フェイストゥフェイスで言いづらいなら、facebookとかtwitterにもいるのでそれらを通じてでもいいです。

今回は、以前のブログと少し趣向を変えて、マクロな話をします。先日、ICUDSの合宿に参加させてもらって、恐縮ながら経済のレクチャーをしました。その時に、評判がよかったと聞いているので(だと信じています苦笑)そこから拝借するつもりです(×ネタギレ・面倒くさい)

 具体的な内容としては、経済学はどのように世界を捉えているかです。クッキーカッターっぽいものや専門知識を絡めて説明していきます。

まず最初に経済系クッキーカッターというと、以下のような

Small Government or Big Government

みたいなものがあります。経済学の教科書とかでも説明されていることですし、米国政党の対立軸だったりしますし、ある程度汎用性はあるのかと思います。これを使って説明します。

 まず、このGovernmentが想定する状況を類型化すると以下の3つになります。

a. Win-Win
b. Win-Lose
c. Win-Win-Lose

a. Win-Win
取引における売り手と買い手の双方がwinする状況です。多くの状況においてはWin-Winです。例えば、さんまの売り手は自分がwinする価格でさんまを売る一方で、買い手はバナナなどの他の選択肢があるなかで、自分がwinするさんまを買ったとします。その時は、まさにwin-winの関係と言えますね。
この状況の前提としては、多数の取引主体がいることです。例えば、さんまの売り手しかいなかったら、さんまが嫌いでバナナが好きな買い手はunhappyである一方、バナナが好きな買い手しかいなかったら、さんまの売り手は売れないのでunhappyです。サンマやバナナの売り手及びサンマやバナナの買い手がたくさんいて始めて、win-winになるのです。
他の前提としては、買い手がinformedであって、rationalでcost and benefitをcompareできる状態であるということも付け加えておきましょう。これに関しては、すでに既知のことが多いと思うので、多くは論じません。
この状況においては、政府の必要性はないですから、small governmentになるわけです。ちなみに何がスモールかというと立法や規制、指示などの政府の活動です。

*Asbest君「何で例がさんまとかバナナなの?やっぱり年をとると感覚が古くなってくるのかな。プライズは取っても、年は取りたくないね(苦笑)」
この例には特別な意味はないです。なんとなくですが、ただICU生はこの意味をわかりますよね。

b. Win-Lose
売り手か買い手のいずれかがloseになるのですが、現実の多くは買い手がloseする主体になります。例えば、中古車で考えてみましょう。専門知識を持っている売り手はその中古車が不良品か否かは知っている一方で、買い手の多くは専門知識を持っていないのでその中古車が不良品か否かの判断はつきません。仮に、取引が成立した場合はその取引成立時はwin-winかもしれません。しかし、買い手がいざ乗ってみると、ブレーキが利かず事故なんてことも起こりかねません。まさにwin-loseですね。
ここで多少説明すべき点は、「専門知識」というところです。経済学っぽい言葉を使うと「情報」とかこういう片方に情報が偏在している状況を「情報の非対称性がある」とか言ったりします。この専門知識というのはコンテクストによって変化します。外食だったら、味だったり、衛生面だったりになったりします。
aのところ同様に、このwin-loseという状況は人々がforcedでirrationalの時も起こります。また、説明は省きます。悪しからず。
こうなった時はまさに大きな政府の出番です。例えば、中古車が欠陥品であることを避けるために車検を義務付けたり、外食店には衛生に関する法律を作ったり、整形外科産業にはしっかり整形のリスクを伝えるよう指示したりします。そういうことをして、win-winの状況を作るわけです。

*余談ですが、不良品の中古車をLemonと経済学では比喩しています。理由は、見た目からは腐っているかどうか分かりにくいというレモンの性質が今回の中古車のことを説明するのにぴったりだからです。どーでもいいですね。

c. Win-Win-Lose
 売り手と買い手がwin-winなのですが、loseなのは「売り手と買い手以外です」。例えば、第3者だったり、社会だったり、はたまた未来世代です。例えば、環境問題であるならば、ディーゼル車はその売り手と買い手はhappyですが、周りの人たちは排気ガスで困ってしまってunhappyですよね。
 こういう時、政府はガス排出量の規制をしたり、環境に優しい車が売れるように補助金をしたりします、大きな政府として。

*こういう他者への害のことを経済学ではExternality(外部性)とか表現します。これに対する古典的アプローチの一つとしては、taxです。例えば、排気ガスという外部性を抑制するために炭素税なんかをかけたりします。

以上が、政府が想定する状況の3つの類型です。ざっくり言うと、aの状況では小さな政府が、bとcの状況では大きな政府が望ましいでしょう。

(続きます)

石渡慧一 
国際基督教大学卒業、東京大学公共政策大学院修士1年。2009年度ICUDS部長。Australs 2009 ESLブレイク、 All-Asian 2008 EFLブレイク(なお、この年の北東アジア参加者の中で1位)、NEAO 2009 EFL ブレイク、NEAO 2010 ジャッジブレイク

2011年9月4日日曜日

労働組合 (後編)

以上が、今回の労働組合モーションの分析でした。多少、議論が専門的で話がずれた所が多かったので、汎用性が高い話とこの原稿の注意点をいくつか添えて、結びとします。



1.Be Specific!!
こんな長文を書いているのも一つ理由があります。一つのモーションにはこれぐらい真剣に向き合ってほしいという希望です。具体的に真剣に向き合うというのは、リーズニングを深めることと具体例を見つけることです。深いリーズニングに関しては、1回目と2 回目を読んで、鋭い人は気付いたと思いますが、経済系のモーションも突き詰めてみると、ディベートでよく議論される人間の合理性というところに結構、ぶちあたります。今回だと、破綻する企業に対して労働者は高い水準をするかどうかってところですね。だから、経済モーションだからと言って、臆せず長文がかけてしまうほど考え抜いてほしいですところです
もう1 つの具体例に関しては、説得力を高めるというのはもちろんなのですが、自分が本当に肌で理解してほしいという意味もこめています。断定できませんが、ある程度GM やらトヨタなんていう具体例をまじえたからこそ、この原稿が身近になっているのかなと思います。ICU に所属していた時や大会にジャッジとして協力させてもらった時に、新入生を始めた子に口酸っぱく言っていることの一つとして、「まずは日本語で分かるまで考えて、説明してみて」というものがありますが、こういったことを意図しています。もっとテクニカルな話としては、ポイントをサポートする例とサポートしない例をみつけるとより深いマターを考えるきっかけにもなります。

*例えば、GMの反例、つまり労働者の高い要求によって再建がうまくいかなかったという例に対する反例の一つにJALの話があります。ご存じの通り、JALは破綻しました。その時にメディアが報じたように、退職者の不当に高い福利厚生がその再建の足かせになっているということでした。そのままであれば、GMの二の舞だったのですが、それを恐れた退職者が高い福利厚生を諦めて、再建を後押ししたという美談(?)がありました。一般化して言うと、「昔の失敗に学んで、馬鹿じゃない労働者は安易に高い要求しないよ(だから労働組合は廃止しないで!)」みたいな感じでしょうかね。こういう反例を見つけると一歩進んだリーズニングも得られたりします。あくまで、テクニカルな話として。

2. Be Critical!!
としさんではないですが(苦笑)、僕が言ったことは批判的に受け止めてください。今回なら労働組合のことをある程度書いたわけですが、前述の話だけが労働組合の是非を論じるうえでの話だとは思わないでくださいね。他にも非正規雇用の話だったり、組合の中の政治なんかもイシューですしね。クッキーカッターとかフィロソフィーを学んだ初級者に多い失敗ですが、安易にその枠組にしばられて、「このモーションの議論はかくあるべし」みたいなバイアスもってしまって、他のイシューを見落としてしまうということです。うまい海外ディベーターのクロージングを見てみると、イシューは無限なんじゃないかと時々、錯覚してしまいますよね苦笑 重要な話であったかどうかは、あくまで広くかつ深い議論を行ったかによりま

3.What should you do?
このようにいろいろと書いていますが、読者にとってすべてが有益だとは思っていません。むしろ、害になることがおおいぐらいです。それでも、有益だと思うのは、一つぐらいは読者の方につながることがあるのでないかと、地味に信じているからです。だから、読者の方は、自分なりに必要だと思うところを得るために勝手に取捨選択してくださいね。
気がつけば5000 字を超えていました。まだまだ反省が足りないようですね
苦

*今回は、文の流れを切りたくなかったのであえて参考文献は載せませんでしたので、ここで軽くアナウンスメント

労働組合と賃金の話
マンキュー、『マクロ経済学ⅠⅡ』、東洋経済、2008 年
JALの話
斎藤誠、『競争の作法』、筑摩書房、2010 年
それ以外
ウィキペディア

*なるべく事実や学問的な議論に反したくないので、慎重に根拠に基づいていきたいところですが、時間の制約上、昔読んだ本とか雑誌を掘り返したりするのは難しいので、やや信頼性のかけるリソースであるウィキペディアにお世話なりました。ご容赦ください。以上です。失礼します。



石渡慧一 
国際基督教大学卒業、東京大学公共政策大学院修士1年。2009年度ICUDS部長。Australs 2009 ESLブレイク、 All-Asian 2008 EFLブレイク(なお、この年の北東アジア参加者の中で1位)、NEAO 2009 EFL ブレイク、NEAO 2010 ジャッジブレイク

2011年8月27日土曜日

労働組合 (中編)

上で説明した通り、労働組合は労働者の利益を守るための組織であるわけです。それがまさに必要性です。良くある話として、経営者は労働者より立場が強いので、労働者の利益を奪うことが簡単というのが背景です。歴史臭がぷんぷんする話としては、女工哀史や蟹工船にでてくる労働者は不当に、賃金を低く抑えられ、搾取されていたわけです。こういう人たちを救うには労働組合が必要だというのはなんだかうなづけますよね。今の世相で考えるならば、不安定な非正規労働者なんでしょうかね。

*経営者が労働者より立場が高い理由に単純に給料に関する権利や人事権というのもありますが、その数の多さにも理由があります。経営者としては、あまり能力の差がみられない労働者が多くいると、高い賃金を求める労働者よりも安い賃金でたえてくれる労働者を優先するでしょう。そうなった時、高い賃金を求めていた労働者はその高い賃金を諦めざるを得ないでしょう。いわゆる足元をみられるとういやつです。

Asbest 君
「今の時代、労働組合とかあんまり聞かないし。新宿駅で国鉄時代の労組出身の人が裁判関係で運動してたりするけど、春闘(労働組合の運動)とか毎回、賃金据え置きで労働組合って本当に労働者の生活を守るために機能しているの?機能していない≒必要ないってことでしょっ」

我ながらよい質問だと思いました(いやAsbest 君ですね苦笑) 答えはYes でありNo であります。というのは、労働組合の存在は活動しなくても、見えない形で圧力を変えて、労働者の利益を守っているという意味ではYesである一方で、労働組合の構成員が減ったり、組合運動をしなかったら次のポストを約束するという暗黙の了解を作ることで、労働組合を空洞化させたりして、労働者の利益が守り切れていないという意味ではNoです。

*今回のモーションの意図とは多少離れますが、労働組合の必要性が薄れてきた一つに労働市場の流動性があがったという背景があります。この流動性と言うのは、簡単に言うと転職のしやすさです。日本は一般的に、終身雇用だったりで転職がしにくいので、労働市場の流動性が少ないって言われています。アメリカのような転職をどんどんしているところにおいては、労働組合は必要ないです。なぜなら、賃金や福利厚生に不満を持ったら、労働運動して失職するリスクを冒すより、さっさとよりよい条件をめざして転職すればいい訳ですから。こういう話かなんかはオポの労働者の利益を守るために労働組合が必要って議論に対応する反論として使えるんでしょうかね。とはいえ、スキルや転職のための費用を十分には持ち合わせていない貧困労働者にとっては、転職なんてのは非現実的ですから、まだまだ労働組合は必要と言えるでしょう。

オポの議論をまとめてみると、労働市場の流動性が上がってきたとはいえ、経営者と労働者のアンバランスな関係は依然として強く残っているので、労働者の利益を守るために労働組合は必要だということになるでしょう。

(つづきます)

石渡慧一 
国際基督教大学卒業、東京大学公共政策大学院修士1年。2009年度ICUDS部長。Australs 2009 ESLブレイク、 All-Asian 2008 EFLブレイク(なお、この年の北東アジア参加者の中で1位)、NEAO 2009 EFL ブレイク、NEAO 2010 ジャッジブレイク

2011年8月12日金曜日

労働組合 (前編)


石渡です。

前回の執筆より、大分間隔が空いてしまいましたが、試験期間中であったということでご勘弁ください。夏休みの間は時間が許す限り、書くつもりです。

前回の原稿は、政府官庁の予算や政策、ブキャナンの主張、経済学における古典的論争など多少、難しい内容を混ぜてしまったかなと思ったのですが、一部のICUやUTのディベーターの子たちから「これぐらいがちょうどいいです」とか「もっと難しくて大丈夫です(てか院生なら当たり前だし、それぐらい書けよ)」という声や行間に隠された裏の声(ただの妄想です笑)を頂いたことを踏まえ、水準に関してはこの程度を維持していこうと思います。ICUとUTというサンプルバイアスがありそうですが、特に他から原稿内容に関してロビイスト活動がなかったので、あえて見逃します。

今回の原稿で論じるモーションは
That trade unions should have their power restricted during times of economic crisis.
です。

僕が参加した時のオーストラルで出たモーションです。確かサイドがガバで、大会参加前に何回か思考実験したモーションだったので、やりたいなと思っていました。しかし交渉の結果、違うモーションになり、あえなく負けました苦笑

そんなどうでもよい過去の話はさておき、労働組合の是非は昔から議論されてきました。古くだとマルクスおじさんがいた時とか、最近だと国鉄の民営化の時とか。おそらく、普遍的な対立軸があるのではないかと思います。

では、個別具体的に分析していきましょう。

モーションが出された時期が2009 年ということや経済危機という単語から推察するに、リーマンショック後に発生した問題を意識したモーションでしょう。その問題とは、うまくいかないGMの再建問題です。Economist とか海外のメディアかなんかで目にしたのですが、GM はリーマンショックの影響を受け、売り上げが落ち、破綻寸前でした。そこで政府は、うん兆円もの融資を決め、再建に乗り出しました。しかし、ご存じの通り再建は実らず、破綻してしまい、国有化されました。

*ちなみにGoverment に国有化されたので、Government Motors と揶揄されまいた(どうでもいいですねw)

ここで皆さんに考えてほしいことは、なぜGMだけ破綻したのかという点です。だって、トヨタだってあるいはクライスラーだって、リーマンショックの影響を受けてますしね。

その答えの一つにGMにおける労働組合の存在があります。労働組合を構成する労働者は、ショック前から経営陣に対して、高い要求をしてきました。具体的には、手厚い年金や医療保険の給付です。これらが大きな負担となって、破綻という結果になってしまったわけです。だから、経済危機とい
うあらゆるコスト削減が望まれる時期においては、経営者含め労働者にも痛みを共有してもらう状況をもたらすために、労働組合の力を制限しようというわけです。

*労働組合がなぜこのような要求を行えるかについては、皆さんご存じだとは思いますが、簡単に説明します。労働組合というのは、労働者が組織し、ある一定の目的をもって「足並みをそろえて」行動する団体です。例えば、この団体が経営者に対して、高い賃金を求めて、ストライキをしたとしましょう。
この時、利益を追求する経営者は、高い賃金を認めた時のコストとストライキによるコスト(例えば、そもそも製品が作れないとかブランドイメージが下がるとか)を比較して、次なる行動をします(賃上げor 無視して労働者が折れるのを待つ)こんなわけで、労働組合は実現するかもしれない賃上げを要求し、ときたま成功して労働組合が望む結果が得られるわけです。

*労働組合の力の制限というのは、これまたひどく抽象的な表現ですが、定義次第でしょう。考えられるのは賃上げの要求水準の天井を決めるとか年金給付期間の制限とかなんですかね。実際の世界では厳格なそれが求められそうですが、「採算が合うように調整する」とか「他の会社の平均的な水準に合わせる」とか言えば、ある程度、屁理屈みたいなディフィニションつつきは回避できるし、ジャッジの納得も得られるでしょう。

とまあ、こんな感じで問題とそれが起きるメカニズムが分かったと思います。

しかし、以前の僕のブログを読んで、頭がちょいと切れるディベーター・Asbest 君はこう考えると思います。「いやいや、賃金とか年金とかについて高い要求することで、破綻することなんて明らかなんだから、労働者は合理的に考えて、破綻して失職するリスクを嫌って、それに応じて、高い要求はし
ないでしょ。それに一時は高い要求をしても、経済が悪くなった時は多少、譲歩していくらかの高い要求は取り下げるでしょ」と。

まあ、良いところはついてきますが、丁寧に反論しましょう。まずは前者のところから。前回のところでも説明した通り、破綻するというリスクが今の労働者に降りかかるとは確実には言えません(前回の原稿と多少、似た議論です)し、さらにはGMとか大きな企業になると、「アメリカ経済ならびに世界経済への悪影響を鑑みて」ということで、政府の莫大な公的資金が期待できるでしょう。だから、将来世代において破たんリスクが増えることとか気にせずまた国民の税金が使われることと織り込んで、高い要求をするわけです。

次は後者のところ。労働者がフレキシブルに対応して、労働者の利益を調整するという主張です。結論から言うと、そこまでフレキシブルではありません。道徳っぽい話をすると、人間は一度吸った甘い汁は忘れられないですし、経済っぽい話をすると、住宅や自動車のローンをその時の高い給料
をもとに組んでいて、給料などの労働者の利益が下がることを極度に嫌うからです。

*経済学ではこういう賃金が下がりにくい性質のことを賃金の下方硬直性なんていう小難しい単語で表現しています。ちなみに、マンキューおじさんの教科書では、新古典派とケインジアンの違いは短期においてこの性質を認めるかどうかっていうことだそうです(軽くスルーしてください)
将来世代の破綻リスク及び国民の税負担を考慮しない労働者及び彼ら彼女らが構成する労働組合が不当に高い要求をして、経営を圧迫して、そのことが経営再建の足かせになっている(だから労働組合の力を制限しろ)というのがガバメントの議論でしょう。

では、次になぜ労働組合がなぜ必要かという話にうつりましょう。 (つづきます)

石渡慧一 
国際基督教大学卒業、東京大学公共政策大学院修士1年。2009年度ICUDS部長。Australs 2009 ESLブレイク、 All-Asian 2008 EFLブレイク(なお、この年の北東アジア参加者の中で1位)、NEAO 2009 EFL ブレイク、NEAO 2010 ジャッジブレイク

2011年7月14日木曜日

純ジャパが海外を制すには? (後編)

(前回の続きです)

では、逆の視点、つまり「財政赤字は許される」といった議論を考えてみましょう。

ビルトインスタビライザー

という言葉を知っているでしょうか。財政に備わっている景気を自動的に安定させる装置です。このビルトインスタビライザーのもとでは、不況時には所得減で税収が減ったり、失業増で失業手当が増えたりするなど、財政への負担が増えたりする一方で、好況時には税収が増えたり、上のような社会保障費を経るわけですから、財政への負担が減ります。

この前提に立つ時、財政赤字を招く減税や財政政策は許容されます。なぜなら、それらの政策は人々の消費を活性化させ、好況をもたらす可能性からです。そうなれば、増税しなくても自然と税収が増えたり、発展途上国なんかで考えてみるとこれをきっかけに行動成長を起こしてGDPが爆発的に増えるというありがたいことさへきます。だから、一時の財政赤字は許されるわけです。

例えば、麻生政権が行った経済政策であるエコポイントは、景気浮揚策として一定の効果をあげました。政府の試算によれば、5兆円もの経済効果がありました。それに多くの人が、環境に優しい自動車を買って一石二鳥でしたね。

*エコポイントシステム
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%B3%E3%83%9D%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%88%E3%81%AE%E6%B4%BB%E7%94%A8%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E5%AE%B6%E9%9B%BB%E6%99%AE%E5%8F%8A%E4%BF%83%E9%80%B2%E4%BA%8B%E6%A5%AD


ちょっと鋭いディベーターは、「けど、ビルトインスタビライザーとかいう考え方があったとしても900兆円もの借金をどうやって対処するんですか。火の車でやばくね?」とか思ったりするんじゃないでしょうか。

この指摘は全くもって一見、正しそうに見えます。しかし、経済学者ならこのようにかわします、「一般の家計のように借金を捉えることは政府レベルでは適切ではなく、またそのように捉えたとしても、政府には莫大な資産(土地や外貨など)があるので問題ないです。それよりも考えなければいけないのは政府における収入と支出のバランスであるプライマリーバランスです」例えば、税収が40兆円で、歳出が40兆円ならば、プライマリーバランスは取れていると言えます。結果的に、景気のサイクルである3から10年というスパンでみるならば、プライマリーバランスは取れていると言ったことがあります。小泉政権時に、イザナギ景気匹敵する連続的な好況でひさしぶりにプライマリーバランスがプラスになったということがありました。

プライマリーバランスが重視される理由には、財政破綻が起こる可能性を測る指標になるというものがありあます。例えば、プライマリーバランスが悪かったら、永久的に財政赤字が増え続け、それに応じて財政破綻する可能性も高くなり、国債のお金が返ってこなくなります。逆に、プライマリーバランスが良かったら、長期的ですが財政赤字は減り、それに応じて財政破綻する可能性は減り、国債のお金はちゃんと返ってきます。つまり、プライマリーバランスの良し悪しによって、国債を買うかどうかが決まり、ゆえにプライマリーバランスがよかったら財政破綻を防げるわけです(最悪の事態を免れる)

*政府の資産についての議論は、皆さんが思った通り、経済学者のいい訳っぽく聞こえるきらいがあります。実際、政府の資産なんていうのは計算しづらいですし、また売ることもできませんから、少し普通の資産とは違った性質を持っていて、資産としてカウントできるかも未知数です。けれども、プライマリーバランスの議論を丁寧に行えば、ある程度経済学の知的水準が高い海外ジャッジなんかは理解できるのではないかと思います。他にも、政府のカネの使い方を市民が決めるべきといった社会契約論っぽい議論などもできますし、オポ側のスタンスはいろいろあるので柔軟に考えて下さいね。

以上をあっさりとまとめてみると、長期的には財政赤字は許されなさそうですが、短期的には許されそうな感じがします。ガバとオポ双方に、一分の理があるということが分かってもらえたかなと思います。もちろん、海外大会ではこれぐらい議論は当たり前のようにされていたようなので(池原○明さんと高柳○太くんいわく)、双方ともが長期と短期の互いの弱い点をうまく補強する議論をだしたり、「~べき」議論をだしてみたりして、包括的な戦略が次には求められそうですね。

具体的には、、、、と思いましたが、これ以上皆さんが考える余地を奪ってしまってはいけないので、いったん止めるということにします(×石渡が寝たい)

皆さんにぜひ、考えてほしいテーマとして、列挙してみます。リサーチや思考実験などをして周りの人と話し合ってみてください。もちろん、次にお会いする機会があれば石渡に直接議論してもいいです。Welcome!!

1、    なぜIMFあるいは中央銀行が予算決定権を持つべきなの?
2、    そもそも財政破綻ってどれだけやばいの?
3、    財政破綻していない国もあるけど、それらの国はどうやって破綻を回避したの?
4、    (少し難しい議論として)二大政党制をもつ国で財政赤字が多いのはなぜ?

長文でしたが、どうでしたか。経済学が政治学や法学の議論よりもアレルギーが高い理由に、政治学や法学が平等や人権といったなじみやすい概念を扱うのに対して、経済学は今回の文章に出てきたような専門用語(ビルドインスタビライザー、プライマリーバランスなど)が多く、また前提とする論理(所得税は累進的、円高は輸出に不利とか)が多いからなのかなと思います。ということで今回の文章で、少しでも経済に対する理解が高まったのであれば、筆者としては幸いです。

このブログ執筆に関わったひとつの動機でもありますが、純ジャパでも確かなマターがあれば、微妙な英語をカバーして、十分に活躍できるのではないかと思っています。クリアなマターとクリアなマナーは裏返しの関係にあるとも思っています。だから、一つ一つの概念を大切にしたり、現実に対する意識を高めたりして、日々マターを磨いていけば、自ずと海外でも活躍する日が来ることを約束します、マジで。ガハク君よりは、TOEICの点数が高いですが(苦笑)、英語がダメダメな僕でもそれなりに活躍していますし。

最後に。質問や特にこういうネタを書いてほしい意見はお待ちしていますので、ぜひmarketplace.debate[@]gmail.com([]を外してください)にメールしてください。


石渡慧一 
国 際基督教大学卒業、東京大学公共政策大学院修士1年。2009年度ICUDS部長。Australs 2009 ESLブレイク、 All-Asian 2008 EFLブレイク(なお、この年の北東アジア参加者の中で1位)、NEAO 2009 EFL ブレイク、NEAO 2010 ジャッジブレイク、1年時ワールドでDCAと同じラウンドに突っ込まれたところイラジャ認定される。

2011年7月10日日曜日

純ジャパが海外を制すには? (前編)

 石渡と申します。「誰、それ?どっかのイラジャか?」と思った人たちのために、自己紹介をクイズ形式で。該当する者を考えてください。

①    大会の時によく首に巻きもの(ショール)をしている人
②    ICU生と東大生とよく話していて、どっちの所属かイマイチ分からない人
③    池原○明さんの次にスタイルがたぶんスマートな人

正解は、、、

すべてです(笑)ICU卒東大院所属(今は一年生)で、ショールは十種類以上持っていて、ジーンズはスキニーしか合わない人です。全く意味のない自己紹介なので、今回のブログにつながる紹介をすると、学部時に経済学メジャーで、院でも経済政策コースに所属しています。主に学部時代に行っていたディベート活動としては海外旅行兼英語を強制的に向上させる留学プログラムとして海外大会によく参加していました(エイジアン×1、オーストラル×1、ニャオ×2、ワールド×1)

ということで、僕が執筆するブログは題名の通り、「純ジャパが海外大会を制すには?」ということを中心に書いていきたいと思います。

海外大会にそれなりに参加した僕の経験から言うと、「経済とIRを制する者が海外を制す」です(IR: (International Relationship)過去のモーションをみれば分かるように、ボツワナワールドではジムバブエやイスラエル、中央銀行、マカオエイジアンではEEZsやWTOなどモーションの中にそれらしき単語が散見されます。あるいはモーションが暗に求めるエグザンプルなどを考えたら、経済とIRの知識が必須であることが分かったと思います。

そこで今回は、今日、世界中で話題になっている財政赤字をたたき台にして、経済学の考え方や知識を解説してできたらなと思っています。ICUでは石渡は長文駄文を書くことでUTでは長いリフレクを行うことで有名です。覚悟してくださいね(笑)

財政赤字というテーマを選んだのは、前回のワールドでもICUTでも以下のようなモーションがでていたからです。
This house believes central banks should set limits on government spending.
THBT IMF should cap government debt of member states.

モーションがもつ問題の背景には、世界の各国(ギリシャ、日本、ポルトガルetc)が軒並み巨額の財政赤字を抱えていることがあります。日本に至っては、約900兆円の財政赤字です。今の税収が約40兆円なので、国民へのサービス(教育、福祉、軍事etc)を一切停止しても利息など抜きで単純に考えて、20年以上も返済にかかります。このようなこともあって、上のワールドやICUTなどのモーションが考案されたのでしょう。

*正確性を期すために、適宜参考資料などを紹介するつもりですが、日本の国家予算などの基本知識に関しては、AveregeReasonablePersonとしては前提だと思うので紙面の都合上割愛します(×面倒くさい)。

ちょっとディベートに慣れてきた人たちの中には、「財政のムダを省いていけばいいんじゃない?議員の給料とか無駄な公共事業とか」とか「ローンなどの借金を抱えている人々がいるように、政府は理性的な判断を持っているのだから、借金しても未来には返せるんだから大丈夫っしょ(ドヤッ)」みたいなことを考えて、問題の深刻性を真剣にとらえていない人もいるのかなと思います。

その淡い期待とは裏腹に、予算の大半が、医療などの社会福祉や教育などの「必要」な支出であり、仮に公務員の給料などの支出を切りつめても1兆円単位しか得られなく、「公務員や議員に関するムダを省け」みたいなメディアの論調は、この観点からみるとややパフォーマンス性が高いものと言えるでしょう。(参照 財務省のHP)

また、重要なことに財政赤字は「構造的」に拡張していくものだと考えられています。なぜなら、政治経済学者のブキャナンが述べるには、民主主義制度においては、人々は本質的に減税や国債発行を伴う財政政策を求める性格があるからです。よく選挙なんかで言われる「増税を言うと選挙で負ける」というやつです。日本の例をみると明らかです。税収40兆円しかないのに対して、予算は90兆円で、不足分はすべて国債、つまり借金です。「これがポピュリズム民主主義の結果です」(先日参加した与謝野大臣セミナーでの大臣の言葉)日本に限らず、海外でもギリシャやポルトガル、イタリアも同じような状況です。

*ブキャナン wikipedia

*日本の例に特化していますが、これは僕が知らないのではなく、日本と言う身近な例で実感してほしいのと、ぜひ皆さんに調べてほしいからです。ディベートで求めらる例ぐらいであるならば、簡単な新書だったり、ウィキペィアを含むインターネットサイトで大体、事が済むでしょう。

またまたちょっとできるディベーターには、「どうせ後で借金を返すために、負担を強いられるし、財政破綻したら痛い目に会うのは俺らなんだから、そんな馬鹿なことしないよ”People are not so STUPID!!!”(キリッ)」と思って、ブキャナンに果敢に挑もうとする人もいるかもしれません。

ブキャナンに代わって僕が反論すると、その議論は非現実的です。なぜなら、痛い目に会うのは、彼ら(現役世代)ではなく息子娘たち(将来世代)であって、彼らは負担を背負う可能性が低いからです。だから、彼ら現役世代は財政赤字という問題の深刻性を見誤っていて、ある意味彼らとしては「合理的」に減税や財政政策を求めてしまうわけです。

*「現役世代が将来世代のことを考えない」という命題に関しては、経済学の分野では論争がありますが、ディベート的にはこの命題がほぼ正しいと思うのが賢いでしょう。ちなみに論争の中身が気になる人は、遺産がなんであるのかっていうのを考えてみるといいです。

このような「現役世代が将来世代のことを考えない」/「民主主義制度においては、人々は本質的に減税や国債発行を伴う財政政策を求める性格がある」という前提が先のモーションの問題に対する深い分析になるわけです。

では、逆の視点、つまり「財政赤字は許される」といった議論を考えてみましょう。 

(次回につづく)

 
質問や特にこういうネタを書いてほしい意見はお待ちしていますので、ぜひmarketplace.debate[@]gmail.com([]を外してください)にメールしてください。次の記事を書くときにも参考にします。


石渡慧一 
国際基督教大学卒業、東京大学公共政策大学院修士1年。2009年度ICUDS部長。Australs 2009 ESLブレイク、 All-Asian 2008 EFLブレイク(なお、この年の北東アジア参加者の中で1位)、NEAO 2009 EFL ブレイク、NEAO 2010 ジャッジブレイク、1年時ワールドでDCAと同じラウンドに突っ込まれたところイラジャ認定される。