2011年7月10日日曜日

純ジャパが海外を制すには? (前編)

 石渡と申します。「誰、それ?どっかのイラジャか?」と思った人たちのために、自己紹介をクイズ形式で。該当する者を考えてください。

    大会の時によく首に巻きもの(ショール)をしている人
    ICU生と東大生とよく話していて、どっちの所属かイマイチ分からない人
    池原○明さんの次にスタイルがたぶんスマートな人

正解は、、、

すべてです(笑)ICU卒東大院所属(今は一年生)で、ショールは十種類以上持っていて、ジーンズはスキニーしか合わない人です。全く意味のない自己紹介なので、今回のブログにつながる紹介をすると、学部時に経済学メジャーで、院でも経済政策コースに所属しています。主に学部時代に行っていたディベート活動としては海外旅行兼英語を強制的に向上させる留学プログラムとして海外大会によく参加していました(エイジアン×1、オーストラル×1、ニャオ×2、ワールド×1)

ということで、僕が執筆するブログは題名の通り、「純ジャパが海外大会を制すには?」ということを中心に書いていきたいと思います。

海外大会にそれなりに参加した僕の経験から言うと、「経済とIRを制する者が海外を制す」です(IR: (International Relationship)過去のモーションをみれば分かるように、ボツワナワールドではジムバブエやイスラエル、中央銀行、マカオエイジアンではEEZsWTOなどモーションの中にそれらしき単語が散見されます。あるいはモーションが暗に求めるエグザンプルなどを考えたら、経済とIRの知識が必須であることが分かったと思います。

そこで今回は、今日、世界中で話題になっている財政赤字をたたき台にして、経済学の考え方や知識を解説してできたらなと思っています。ICUでは石渡は長文駄文を書くことでUTでは長いリフレクを行うことで有名です。覚悟してくださいね(笑)

財政赤字というテーマを選んだのは、前回のワールドでもICUTでも以下のようなモーションがでていたからです。
This house believes central banks should set limits on government spending.
THBT IMF should cap government debt of member states.

モーションがもつ問題の背景には、世界の各国(ギリシャ、日本、ポルトガルetc)が軒並み巨額の財政赤字を抱えていることがあります。日本に至っては、約900兆円の財政赤字です。今の税収が約40兆円なので、国民へのサービス(教育、福祉、軍事etc)を一切停止しても利息など抜きで単純に考えて、20年以上も返済にかかります。このようなこともあって、上のワールドやICUTなどのモーションが考案されたのでしょう。

*正確性を期すために、適宜参考資料などを紹介するつもりですが、日本の国家予算などの基本知識に関しては、AveregeReasonablePersonとしては前提だと思うので紙面の都合上割愛します(×面倒くさい)。

ちょっとディベートに慣れてきた人たちの中には、「財政のムダを省いていけばいいんじゃない?議員の給料とか無駄な公共事業とか」とか「ローンなどの借金を抱えている人々がいるように、政府は理性的な判断を持っているのだから、借金しても未来には返せるんだから大丈夫っしょ(ドヤッ)」みたいなことを考えて、問題の深刻性を真剣にとらえていない人もいるのかなと思います。

その淡い期待とは裏腹に、予算の大半が、医療などの社会福祉や教育などの「必要」な支出であり、仮に公務員の給料などの支出を切りつめても1兆円単位しか得られなく、「公務員や議員に関するムダを省け」みたいなメディアの論調は、この観点からみるとややパフォーマンス性が高いものと言えるでしょう。(参照 財務省のHP)

また、重要なことに財政赤字は「構造的」に拡張していくものだと考えられています。なぜなら、政治経済学者のブキャナンが述べるには、民主主義制度においては、人々は本質的に減税や国債発行を伴う財政政策を求める性格があるからです。よく選挙なんかで言われる「増税を言うと選挙で負ける」というやつです。日本の例をみると明らかです。税収40兆円しかないのに対して、予算は90兆円で、不足分はすべて国債、つまり借金です。「これがポピュリズム民主主義の結果です」(先日参加した与謝野大臣セミナーでの大臣の言葉)日本に限らず、海外でもギリシャやポルトガル、イタリアも同じような状況です。

*ブキャナン wikipedia

*日本の例に特化していますが、これは僕が知らないのではなく、日本と言う身近な例で実感してほしいのと、ぜひ皆さんに調べてほしいからです。ディベートで求めらる例ぐらいであるならば、簡単な新書だったり、ウィキペィアを含むインターネットサイトで大体、事が済むでしょう。

またまたちょっとできるディベーターには、「どうせ後で借金を返すために、負担を強いられるし、財政破綻したら痛い目に会うのは俺らなんだから、そんな馬鹿なことしないよ”People are not so STUPID!!!”(キリッ)」と思って、ブキャナンに果敢に挑もうとする人もいるかもしれません。

ブキャナンに代わって僕が反論すると、その議論は非現実的です。なぜなら、痛い目に会うのは、彼ら(現役世代)ではなく息子娘たち(将来世代)であって、彼らは負担を背負う可能性が低いからです。だから、彼ら現役世代は財政赤字という問題の深刻性を見誤っていて、ある意味彼らとしては「合理的」に減税や財政政策を求めてしまうわけです。

*「現役世代が将来世代のことを考えない」という命題に関しては、経済学の分野では論争がありますが、ディベート的にはこの命題がほぼ正しいと思うのが賢いでしょう。ちなみに論争の中身が気になる人は、遺産がなんであるのかっていうのを考えてみるといいです。

このような「現役世代が将来世代のことを考えない」/「民主主義制度においては、人々は本質的に減税や国債発行を伴う財政政策を求める性格がある」という前提が先のモーションの問題に対する深い分析になるわけです。

では、逆の視点、つまり「財政赤字は許される」といった議論を考えてみましょう。 

(次回につづく)

 
質問や特にこういうネタを書いてほしい意見はお待ちしていますので、ぜひmarketplace.debate[@]gmail.com[]を外してください)にメールしてください。次の記事を書くときにも参考にします。


石渡慧一 
国際基督教大学卒業、東京大学公共政策大学院修士1年。2009年度ICUDS部長。Australs 2009 ESLブレイク、 All-Asian 2008 EFLブレイク(なお、この年の北東アジア参加者の中で1位)、NEAO 2009 EFL ブレイク、NEAO 2010 ジャッジブレイク、1年時ワールドでDCAと同じラウンドに突っ込まれたところイラジャ認定される。

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