2011年11月16日水曜日

マクロ経済入門 Part 2

少し専門的になってしまったので、個別具体的にモーションを使って考えてみましょう。モーションは核燃料廃棄物の国際取引です。それぞれの類型化されたケースに当てはめてみましょう。

a. Win-Win
環境を大事にする先進国にとっては、多少のお金を失ってもこの取引はwinである一方、環境より経済を優先する途上国にとっては、経済発展のためのお金がもらえてwinです。

b. Win-Lose
aのようなことがあるとはいえ、この取引自体が強制されたものか知れません。力関係がアンバランスな先進国と途上国の間にはよくあることです。つまり、本当は周辺地域への悪影響が懸念される核燃料廃棄物を受け入れなくなったのに途上国が受け入れざるを得ないというケースです。

c. Win-Win-Lose
2国間の取引に不公正さがないように、第3者機関が監視したり、周辺地域に影響がないように、セメントで固めて地中奥深くに埋めたり、また周辺地域住民の合意を取ったりしました。その意味では、win-winなのですが、はたして未来の世代はwinでしょうか。時間がたてば、悪影響が積み重なることだってありますし、たとえばその影響がなかったとしてもその核燃料廃棄物があること自体を認めないかもしれません。
他の例としては、環境問題です。例えば炭素税で環境を守りつつ、経済も多少ケアするみたいなスタンスは、未来世代にとってはwinではないかもしれません。なぜなら、未来においてはつもりにつもった二酸化炭素で環境がめちゃくちゃになることだってありますから。そういう意味では、自動車自体を禁止することのみが彼か未来世代にとっての唯一の解かもしれません。

以上がモーションを例にしてみたところでの3つの類型化された状況の説明です。印象としては、aの時はほったからしで、loseを避けるためにはbの時は多少政府が関与して、cの時はRadicalに政府が関与しないといけなそうですね。

*専門的な話ですが、「主流」である新古典派経済学者の多くは、政府が介入しない市場を肯定します。市場の失敗(≒lose)がある時のみ政府の介入を正当化しますが、基本的には競争によって、みんながwin-winになることを期待しています。偏った私見としては、ディベート的にも競争が行われる市場を否定すること及び競争を阻害する市場の介入を正当化することはそれなりの理由をもってDefendするしかないと思います。

最後に、今回のような少し変わったブログを書いた理由を添えて、終わりとします。

その理由というのは、上のような見方をするとディベートがやりやすくなると思ったからです。具体的に言うのは皆さんが考える機会を奪ってしまうので詳しくは遠慮しますが、具体例でいきましょう。例えば、外食店で初めて食事をするときは、情報の非対称性がるので、win-loseということが起こりえます。ただ皆さまはそういうときどうするどうでしょうか。僕の場合は、食べログで調べてからその外食店に入ります。そうすれば、win-winになる可能性があがりますから。このように政府の力を借りずして、多くの場合win-winになることがあるようです。
抽象的ですが、そんなことを頭に入れておくと新しいディベートの見え方がするのではないかと思います。

以上です。失礼します。

石渡慧一 
国際基督教大学卒業、東京大学公共政策大学院修士1年。2009年度ICUDS部長。Australs 2009 ESLブレイク、 All-Asian 2008 EFLブレイク(なお、この年の北東アジア参加者の中で1位)、NEAO 2009 EFL ブレイク、NEAO 2010 ジャッジブレイク