2011年12月31日土曜日

オフシーズンの過ごし方と指導について 後編

【指導について】
練習会などを通して母校を初めとしてなるべく多くの大学に関われるようにしていますが、その際に気をつけていることをここからは書かせていただきたいと思います。
まずは、相手の段階と特徴をしっかりと掴むことだと思います。厳しいことを言うと凹んでしまう子に厳しいことを言っても効果は薄いですし、逆に自己評価が低い・厳しい人を褒めても反発してしまうなどfeedbackは難しいと思います。また、仮に厳しいことを言うにしても、信頼関係のないところでいってもほとんど効果はありません。反感を生むだけです(それが成長のエネルギーになればいいですが、そんなサイヤ人みたいな精神の人ばかりではありません)。なので、なるべくコミュニケーションを取って相手を知り、自分を知ってもらい、自分の人柄を信頼してもらうことを優先して欲しいと思います。
個人的な経験から考えると、伸びるなーという子は質問などを通してよく話していることが多くて、伸び悩むなーという子はそういうことをしない傾向があるのかなと思います。伸びない子はいなくて、時間差があるだけとは思うので、指導の際には諦めずに粘り強く見ていくことが大事だと思います。時には褒め、時には叱りながら信頼関係を作っていけば、話も聞きやすいと思いますし、何をすべきなのかを教える側も把握しやすいと思うので才能だとか変なラベルを貼らずに気長に成長を見てあげて欲しいなと。
例えば、最後の最後で2008年度のESUJを予選1位ブレイクした人は縁もあり、色々と関わってきたんですが、これは練習会以外でも、Mixiのメッセージなどで質問を度々してきて、それを添削して返すということを繰り返すなど地道な努力を繰り返してきた結果が最後に花開いた形だと思います。これは教える側が諦めなければ、何かしらの結果は出せるのかなと思った一番の実例です。

最後にこれはJudgeとして辞めておこうという部分についても触れておこうと思います。色んなJudgeを見ていてDebaterの一番やる気を削いでいると思えるJudgeの発言は「わからない」というものです。理由が明確化されていない「わからない」ほど聞いていて気持ちの悪いものはありません。Debaterとしては20分準備をしっかりして、一生懸命説明した結果が「わからない」の一言ではやってられません。「~がないからわからない」、「英語が早すぎて理解が出来ない」、「現状が~だから、それとの差がわからない」など「わからない」にしても何種類も可能性がありますし、Debaterが次に向かって進めるようにしっかりとDirectionをするのもJudgeの仕事だと思います。

 DebaterにProblem/Causeを提示させて、Solutionを示せと言うならば、JudgeもDebaterのProblem/Causeを提示して、Solutionまで導くことがJudgeのAccountabilityだと私は思います(もちろん、全部教えずに方向性を示して考えさせるのは重要ですが) また、Feedbackの際に「君達、ダメだね」という関連の指摘はやっている側はわかっているので再認識させる必要はよほどの場合じゃない限りは必要ないと思います。弱っているとこに止めをさすよりかは、いかに気持ちを盛り上げてどうやって同じことをしないか、次につなげるかに時間をかけた方がよほど建設的です。自分のイライラをDebaterにぶつけて解消しても何にもならないですし、信頼を失う原因にもなります。百害あって一理なしです。

【まとめ】

一杯書いたので、まとめますと、
1.オフシーズンにも継続的に練習しましょう。差をつける/埋めるためにもです。ラウンドは無理でも個人で出来ることはたくさんあります。

2.指導をする際は相手を知り、自分を知ってもらいましょう。信頼関係第一です。
Judgeなどを通して粘り強く指導すれば、伸びない子はいません。
JudgeのAccountabilityを果たしながら、建設的なfeedbackをしていきましょう。


ということですね。

末筆になりますが、この記事を通して少しでも今後のDebate界の発展につながればと思います。大会などで顔を合わすことがあれば、またよろしくお願いします。

出利葉貞弘
Gemini cup(2005)3位、The関西(2006)優勝、濱口杯(2006)3位、秋JPDU(2006)ベスト16、ICU-T(2008)ベスト16、Golden cup(2008) 優勝、Golden cup(2009)3位、ディベートのすすめ(2009)ベスト8、The関西(2009)3位、東工大杯(2009)ベスト8、BP novice Kansai 2nd Best adjudicator (2011)/Breaking adjudicator(本選不参加)

2011年12月26日月曜日

オフシーズンの過ごし方と指導について 前編

 このブログを呼んでいるほとんどの方々、はじめまして。知っている方はお久しぶりです。今回、ブログに寄稿させていただくことになった出利葉貞弘(いでりは さだひろ)と申します。

 ここ数年は、あまり関東の大会には行けてないこともあり、ほとんどの方が知らないと思いますので簡単に自己紹介から始めさせてもらいます。20083月に神戸大学を卒業した身(今の4年生が大学に入学した年です)で、卒業後もほそぼそと母校の神戸大学での指導を中心に活動をさせてもらっています(経歴などは最後に載せていますので興味があれば、ご覧ください)。今回は加藤君から何か書いてくださいというスルーパスを受けて寄稿させていただくことになりました()
 テーマが自由ということで、何を書くか迷いましたが、オフシーズンの過ごし方と指導について少しずつですが、書かせていただきたいと思います。

 【オフシーズンの過ごし方】
 凌霜杯、Japan BPが終わり、Tanacupを残して年内の国内大会は終了しました。世界大会に行く人は1月初旬まで大会シーズンですが、大半の方はオフシーズンに入っていると思います。春からの大会シーズンの再開を前に「旅行に行こう、バイトをしよう、テスト勉強だ…etc」と色んなことをしたくなりますが、大会で結果を出したいなら継続的な練習は欠かさずに毎日しておきましょう。11motionのプレパ練習やPMスピーチ練習など短い時間で出来ることを欠かすか欠かさないかで大会シーズンが再開したときに大きな差が出ます。というのも、「何もしない」期間を作ってしまうとリハビリで感覚を取り戻すのに時間がかかってしまって、元の実力に戻ってから初めて上乗せの練習効果が見られることになるので継続的なことをしてきた人に比べて成長に時間的な制約がついてしまうからです。

 ここからは、個人的な見解ですが、多くの人が「何もしない/出来ない」時期に差をつける・埋めることが今の結果に満足できていない人には必要なのだと思います。大会前に練習するのは当たり前ですが、この時期は参加する人は全員練習をしているわけで、努力をしてもなかなか差が埋まりません。一方で、現状で結果が出ている人でもオフシーズンに練習をしない人もいる訳であって、この時期に力を伸ばすことは差を一気に埋めることにつながります。

 実体験を述べると、私は絶対にブレイクするぞと強い気持ちを持って出た2年生の11月のJPDU Tournament(今でいうBP noviceの時期にあった大会)で惨敗をしてしまい、3年のJPDU Tournament(9)で巻き返しを図ろうと強く決心した時期がありました。そのためにまずは関西で開催されるThe関西という大会で絶対に優勝しようと思い、オフシーズンを全て返上して「時事/古典リサーチファイルの増強」、「弱点である英語の勉強」などの努力を12月のオフシーズンから大会が開催される3月までひたすらに続けました(もちろん、遠征を稼ぐバイトであったり、テスト勉強はしていました)。当時の神戸大学の同期たちがインターンに行ったり、短期留学にいったりとラウンドが出来ず、個人でゴリゴリひたすら練習をしていて凄く苦しかったのを覚えてます()

 結果としては、パートナーが最高に優秀だったこともあり、The関西では優勝することが出来ました。大会のmotionは当時の時事ネタが出まくったのですが、リサーチで全て網羅しており、崩れることもなく勝ち進めることができました。

 ここでの自信が深まり、上記の努力を9月の引退試合であるJPDU Tournamentまで続けることができ、最終的にはしっかりとブレイクをすることは出来ました。個人でもそれまで全く縁のなかったSpeaker Prizeを取るなどある程度満足できる形で現役生活を終えることになりました(その後、ESUJに急遽出ることになり、そっちは大コケしましたが汗)

 この経験もあり、神戸の後輩にも言い続けていることですが、「練習をしない時期」は極力少なくすることが自分の望む結果を得るための近道なのかなと私は思っています。オフシーズンはその時期が一番出やすく、力関係が逆転するきっかけになってしまいます。リフレッシュも大事ですし、他のことも大事なというのもわかります。ただ、結果を出したいと心から思うのであれば、その中でも継続した練習を心がけることなのかなと思います。特に、オフシーズンは時間があるからこそ弱点の補強(知識不足ならリサーチ、スピーチ力ならスピーチ練習など)をすることが可能な唯一に近い時期です。今自分に何が足りていないのか、それを埋めるには何をすべきなのかをしっかりと考えてオフシーズンを過ごしてくれればと思います。

(続きます)

出利葉貞弘 神戸大学国際文化学部卒業(2008)
Gemini cup(2005)3位、The関西(2006)優勝、濱口杯(2006)3位、秋JPDU(2006)ベスト16 ICU-T(2008)ベスト16Golden cup(2008) 優勝、Golden cup(2009)3位、ディベートのすすめ(2009)ベスト8The関西(2009)3位、東工大杯(2009)ベスト8 BP novice Kansai 2nd Best adjudicator (2011)/Breaking adjudicator(本選不参加)

ユーロ一考 Part 3

 常々、新聞や海外メディアを見ているとEUやユーロに関しての話題が尽きませんね。メルケル首相ががんばっているようなので、僕も頑張りたいと思います。

して、前回はユーロの慨論について説明させていただきましたが、次はギリシャ危機に関する内容です。以下はなすべきことは、ギリシャ危機はなぜ起こったのかということとそれにユーロは関係したのかの2点です。

最初のギリシャ危機の原因から。これに関しては、多くの報道でなされているとおりギリシャ政府の怠慢です。ギリシャでは、国民の1/4が公務員であったり(票を獲得するために失業者を公務員にするというあまりに近視眼的な政策の結果です)、また定時出社ボーナスに象徴されうる行政コストの無駄がありました。世界各国に共通に見られる現象ですが、遅れたグローバル化への対応です。製造業をはじめとして、ギリシャ経済を支える産業が育っていませんでした。

なぜこのような事態になったのか。このブログの読者であるならば、もうご存じですよね。現世代の人々は、未来世代のことを考えずに、無駄な公共事業で景気良くしようとしたり、社会保障を充実させようとしたりして、向う見ずな財政赤字になってしまう傾向にあります。

*一つレトリックを紹介しましょう。上記のような事態を許容あるいは加速させる政治家のことをPoliticianと呼ぶ一方で、将来のことを考え公正に国益を追求する政治家のことをStatesmanと呼んだりします。さて、日本にstatesmanはいるのでしょうか。あるいはstatesmanを育てようとする国民はいるのでしょうか。

話がそれましたが、次の疑問です。ユーロと財政赤字の関係です。端的に言うならば、ユーロは財政再建を先送りにさせたと言えます。なぜなら、以前のブログで紹介した通り、ユーロは各国に何らかの経済的利益を享受させ、短期的には経済状況が改善されうるからです。ユーロという利益で財政問題と言う構造的な問題をごまかそうとしたわけですね。それを象徴する政治家の行動は、ドイツ政府との交渉の時に起こりました。具体的には、ギリシャ財政が破たんする可能性あった時、ギリシャの政治家は救済を検討するドイツに対して、危機による影響を政治的カードとして行使し、上記にあげた放漫財政を見逃すよう交渉したのです。流石にメルケルさんもあきれたようです(苦笑)

*このようなある制度・政策がある行動のインセンティブを変化せることを経済学ではmoral hazardと言います。実際的には、否定的な結果を招くことが多いので、道徳の劣化と言われていますが、東大の岩本先生曰く誤訳だそうです。非常に有益なロジックなので、いずれブログで説明したいと思います。

一方で、ユーロがなかったとすれば、財政赤字が改善される可能性が上がると言えなくもないでしょう。なぜなら、ギリシャ政府は緊迫する財政問題に対して何らかの行動をうつインセンティブを持つ、つまり正しくリスクを認識しそれにもとづいて適切な行動をとるようになるからです。ただユーロがなかったら、ギリシャがつぶれなかったかどうかは神のみぞ知る領域であるということは言及しておきます。

以上がギリシャ危機とそれに関係するユーロの説明です。

次は、これからのユーロのあるべき姿です。もう鋭い方はお気づきでしょう。ユーロの経済的利益を各国に享受させ、また財政破綻のリスク及び各国への影響を最小化させるためには、「財政規律の堅守」です。民主主義の構造的な問題はさておき、ユーロによる財政構造への悪影響に関しては、これで対応していくことがユーロと言う枠組おいては次善の策です。メディアで報道されていよう、財政赤字をGDPの数パーセントに抑えることを義務付けるようにユーロは動いています。個人的にもこれにまさる代替策はないと思います。

*今回のブログの根拠の一つとして本の著者・田中素香氏はこの財政規律の堅守について1年ぐらい前から指摘しています。まさに先見の明です。また、歴史的背景を述べるならば、過去においてユーロはユーロ拡大を足早に達成するために、財政規律に関しての取り決めがあったのにもかかわらず、ギリシャを始めとした各国の財政状況に目をつむり、また主要国である独仏でさえ、財政規律を破ってきたという歴史的事実があります。だから、PIIGSと呼ばれるような財政問題に対して、極めて問題を抱えた国がユーロに入れたわけです。

*余談となりますが、ノービスでユーロに関するこのような問題意識を取り入れた評価に値するモーションがでましたね。誰かは特定できませんが、モーション作成にかかわっていたT大のK藤くんが付箋だらけのユーロに関する入門書を呼んでいたと記憶しています苦笑

Asbest君「おいおい、結局ユーロは良いシステムなんじゃねーかよ。それじゃ、何でユーロ反対者はあんなにいるんだよ。デメリットもちゃんと説明しろよ。それとも分からないのかな?笑」

・・・・・冷静に行きましょう。

このような財政規律をコントロールするシステムを内包したユーロは、各国の国家主権を著しく侵害していると言えるでしょう。皆さまがクッキーカッターの一つとして、ご存じの通り、国家こそが国民の利益を追求できる最も適切な主体であり、それが国家主権の根拠となっていて、これは否定できないでしょう。これを言うだけでもそれなりにスタンスが構築できます。

ここまで分かれば、及第点ではありますが、はたして上のように各国の主権がいわば暴走し、自国及び他国にまで影響を及ぼしている中で、各国の主権を守る意義はどこにあるのでしょうか。

一つは、既に以前のブログで説明しましたが、5年や10年の景気循環を加味した財政運営は経済的に理に適っています。不景気にはより多くの財政出動、好景気には財政改善。

これだけでは味気ないので、付加価値を加えましょう。独仏などではなく、東欧や南欧諸国といったまだまだ経済途上国には、財政規律を破った経済政策が正当化されます。なぜなら、長期的にみるならば初期の経済投資が長期の発展につながる可能性があるからです。ディベート界にも膾炙しているケインズの乗数効果で説明できると思います。もちろん、自動的にそうなれば開発経済学者などの学者は苦労しないのですが、歴史的にもマーシャルプランの恩恵を受けたヨーロッパ先進国があとになって成功したのは、一時的な財政赤字というリスクを背負ったゆえです。

Asbest君「じゃー、財政破綻させない範囲内で財政規律を各国のGDPに合わせて柔軟に変えればよくね?先進国にはきつく、途上国にはゆるくみたいな、、、、」

極めてディベートが分かっている人のcleverな質問です。

先進国においても、国の政治的社会的利益を追求するために、ある種財政赤字を抱えた財政運営も正当化されます。例えば、北欧諸国が良い例でしょう。彼らは国策として、社会保障を充実させています。これから少子高齢化が進み、財政運営が厳しくなってくると思いますが、彼らに社会保障を諦めさせ、財政運営を健全化することが適切な判断でしょうか。おそらく、否でしょう。充実した社会保障によって、コミュニティや文化が形成され、一説にはそのことが経済活動を活性化させているとも言われています。その結果、他国からもうらやましがられる国へと成長してきたわけです。

このように、先進国や途上国に関わらず、財政規律を課すことは非常に国益を損なう可能性があります。

以上が、ユーロのこれからに関する論評です。はたして、皆さまはどのように思ったのでしょうか。またどうすればこれらの話を活かして、より磨かれた議論ができると考えたでしょうか。答えは皆さまの頭の中にあると思います。極めて論争の余地のあるモーションです。慎重に考えてみてください。

私見としては、国際連盟がその欠陥を克服して、安全保障に多大なる国際連合を設立した歴史があった通り、ユーロもその構造的欠陥を克服して、ユーロ圏内に繁栄をもたらすことを切に望んでいます。

最後に、弁明を。お気づきだとは思いますが、僕のブログは誤字脱字が散見されます。院生としては、恥ずかしい限りですが、時間の制約があってまともに見返せない(+K藤くんが急かす苦笑)ので、ご勘弁ください。内容に関しては、なるべく時間をかけてねっているつもりなので、参考にしていただければと思います。

石渡慧一 
国際基督教大学卒業、東京大学公共政策大学院修士1年。2009年度ICUDS部長。Australs 2009 ESLブレイク、 All-Asian 2008 EFLブレイク(なお、この年の北東アジア参加者の中で1位)、NEAO 2009 EFL ブレイク、NEAO 2010 ジャッジブレイク

2011年12月20日火曜日

ユーロ一考 Part 2


    経済先進国の輸出増加
ギリシャやポルトガルといったもはや昔はすごかったけど、今は多少調子が悪くなってしまった国のベネフィットもある一方で、ドイツをはじめとした経済先進国にもベネフィットがありました。それは輸出の増加です。なぜなら、ユーロ導入後はそれ以前に比べて通貨価値は割安になったので(表現が適切ではないですが、マルク安になったということ)、ドイツ企業の輸出はうなぎ上りに伸びました。リーマンショック以降、先進国はマイナス経済成長率が多い中で、ドイツは23%といった安定した成長率を誇っています(僕自身は、その事実がメルケルの長期政権の一因なのかなと邪推したりしていますが….

*ご存じのように、イギリスはユーロに参加していませんが、ある意味賢くソロバンを弾いたといえるでしょう。というのは、イギリスはそのGDPの多くが銀行業によるもので、製造業が占める割合が大きくなく、ユーロ加入による輸出増加という恩恵が少ない一方でその負担(安定化基金への支出やユーロに入ることによる金融政策の制約)を背負う必要がないですから。ポンドへのプライドや大陸文化に対する島国文化の反抗というところが予期せぬ幸福を招いたやもしれませぬが。

    基軸通貨としての地位確立
 ただ単純にユーロの通貨量が増えたことや①②③のメリットのおかげで域内経済が活発化した結果、世界経済におけるユーロの地位は高まりました(「地位」というのは、政治的パワーみたいなものです)このおかげで国際社会におけるヨーロッパの政治的発言力は増しました。
*お気づきではあると思いますが、これは非常に曖昧なベネフィットです。というのはまだまだ健在のドルや急成長の元、なぜか安心できる通貨である円(苦笑)がいる中でユーロのプレゼンスはどこまであるのか分からないのと、政治的発言力によってどのような効果があるのかは未知数だからです。一流の海外ディベーターなんかはさらっとそれっぽい単語を使ってそれっぽく見せてしまうようなポイントではありますが、そこらへん自信がない日本人ディベーターは、①②③をもってどれだけユーロが圏内にメリットもたらしたかを分かりやすく説明して、さらっとユーロのプレゼンスがあがってユーロの政治的発言力が上がりますとかいえば、cleverだと思います。
以上が、ユーロのメリットです。欧州行政局(?)というところのデータによればユーロ導入後の1500万人ほどの雇用創出効果があったそうです(ちょっとデータの出どころが怪しいので絶対にディベートで使わないでくださいね)

さて次は、ギリシャの財政問題です(ちょっと疲れたので、休憩します笑)

石渡慧一 
国際基督教大学卒業、東京大学公共政策大学院修士1年。2009年度ICUDS部長。Australs 2009 ESLブレイク、 All-Asian 2008 EFLブレイク(なお、この年の北東アジア参加者の中で1位)、NEAO 2009 EFL ブレイク、NEAO 2010 ジャッジブレイク

2011年12月10日土曜日

リサーチのすすめ

こんにちは、加藤です。相当久しぶりの更新になってしまいましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回はリクエストにもあった「リサーチの方法」に関して少し書きたいと思います。
その前に、ざっくりとリサーチの重要性について。

◇ ◇ ◇

「ぶっちゃけパーラメンタリー・ディベートでは、嘘もつけるよね。」
「ロジックさえつければディベートと言うゲームでは勝てるよね。」

こういう噂・話を何回か聞いたことがあります。
残念ながら、資料とかを吟味しない以上、それは構造的にあると思います。

ですが、(こういうぼやきをしている時点で老害化しているのかもしれませんが)ディベートは机上の理論であってはならない、というのが僕の考えです。
変なロジックでも話していくことは、ディベーター・ジャッジ両者に責任があることでしょう。
あまりにも現実離れしているロジック、嘘のFactあたりに関しては、ディベーターはそもそもそんなことを言わないことが求められるはずですし、ジャッジとしてもAverage Reasonable Personとしてそれをキックアウトすることが大事でしょう。(ここはかなり丁寧な議論が必要になりますが……)

なんだかぼやいてしまいました。苦笑 話を戻しましょう。

ディベートにおいてリサーチは非常に大きな意味を持ちます。
・Argumentを思いつきやすくなる
・Argumentの説得度をあげる
・ロジックのTie breakerをExampleでつけることができる
等などなど。

今はBPの季節ですが、Case Setudyでも十二分にExtensionになりうるというのはBP Novice 2011 Official Websiteにも書いてある通りです。
僕の感想なのですが、国際大会でもやはり強いチームはリサーチをしています。
例えば、今年のNEAOを優勝したChung-Ang大学も、リサーチファイルを持ってラウンドしていました。
僕自身も、国際大会で評価されたのはFactをしっかり言えたラウンドが多かったです。

これはまた僕の勝手な予想なのですが、BPのジャッジの仕方が徐々に成熟し始めたり、ディベーターのロジックの強度で優越がつけられなくなる日がそう遠くない日にある気がします。
そうなった場合、リサーチが大きな意味を持ってくるでしょう。
(この予想が外れたらどんまいですが 苦笑 それとは関係なしに、とりあえずリサーチは大事です。)

◇ ◇ ◇

「リサーチ」というと相当ハードルが高いようです。
IRって分からない、何から調べればいいの、時間がかかる……というような声をよく聞きます。
僕自身、あんまりリサーチをすんごく積極的にやっているか、というと怪しいのですが、僕のメソッドを紹介します。

僕は、「脱完ぺき主義者」がキーワードだと思います。
リサーチというと、これも知らないといけない、あれも調べよう、徹底的に日付や名前まで・・・とやりたがったりします。
したがって、調べることすら億劫になったり、調べ始めても途方にくれるパターンがあるようです。

そもそも、1日や2日で、EUのことが全て分かることも、パレスチナ問題のプロになることも、無理でしょう。苦笑
(世の中にはそれくらい頭のいい人もいると思いますが、少なくとも僕はきついです。)
そんなことができたらたくさんの人がアカデミックな道に進んでいると思います。

では、どうすればいいのでしょうか。
BP Novice 2011のGeneral Commentsでも話した内容なのですが、「復習」をしていくことが大事になっていきます。
つまり、やったモーションを、20分くらいでいいので少し調べてみる、この繰り返しにつきると思います。

最近はスマートフォンも大分ポピュラーになってきており、ちょっと調べることは相当容易のはずです。
ちょこちょこっとやったディベートのキーワードを調べたり、一個事例が出てくるだけでもいいでしょう。

ここでのコツは、「どうやってディベートで使うのか?」を考えながらリサーチをすることです。
単純にデータや統計がでてきたとしても、ディベートで使えなければアカデミックに意味があったとしてもディベート的には意味をあまり持たなくなってしまいます。
せっかくのデータなので、どう使用するかを考えてリサーチしましょう^^

最初は分からないことだらけかもしれませんが、ディベートができる分野というのも実は結構限られています。
一つのExampleが本当に様々なディベートで使用できたりしますし、1回基礎知識があると、そのあとに積み重ねていくことは相当楽になりますので、
最初がちょっとつらくてもはじめてみるといいでしょう。

あと、部内でリサーチを共有するシステムを構築している大学は、日本国内でもいくつかあるようですが、それをする場合は特定の分野に詳しい人に聞くのもありでしょう。
僕自身、経済関係に関してはOBのI戸さんや、国際関係に関しては後輩(!!)のF元君などにコバンザメさせてもらっています。
そのかわりといってはなんですが、自分の得意分野に関してはシェアしているつもりですが 苦笑
一人だとリサーチは長続きしないこともあるので、仲間をつくっていくのも大事ですね。

総論っぽい感じですが、これが基本にあると思います。
リサーチの仕方は人それぞれだと思いますので、後は自分のやり方を模索するといいでしょう^^
では、今日はこのへんで。


加藤彰
東京大学法学部3年、2010年度UTDS部長、2011年度監査、BP Novice 2011 Chief Adjudicator。Spring JPDU Tournament 2011を含む4回の優勝、13th ESUJ・Japan BP 2011を含む7回の準優勝、North East Asian Open 2011 Main Semi Finalist、20th JPDU Tournament Best Speaker等。

2011年12月5日月曜日

ユーロ一考 Part 1

 どうも、石渡です。

 先日、W大学のS田くんとK井くんとこのブログについて話す機会がありました。2人からは、「本当に役立っています」とありがたい言葉を頂き、本当に励みになりました。話していて気づいたのですが、もう少しディベートでどう使うか意識しつつ行きたいと思います。
 また、T大学のT永くんとも話していて、改めて気付かされた皮肉な真実がありました。それは「ディベート界の技術や環境は進歩していても、経済(学)の知識は全く進歩していない」ということでした。
 どうでもいい前置きでしたが、今回のテーマはユーロです。今、世界で熱く議論されているユーロです。おそらく、ワールドを含めた近い海外大会でもそれに関連したモーションが出ると予想しています。もはや、リーマンショックの時と同様にここまでホットなイシューを議論しないディベートは、現実問題に対して考えられうる解決策を議論するというディベートの目的の一つを失ってしまい、ただの机上の空論になりさがってしまうんじゃないかとさえ(極端ではありますが)思ってしまいます。
 とはいえ、ギリシャの財政問題に端を発するユーロに関する議論は成熟しているとは言えず、またこれからもギリシャの状況は予断を許さない状況であるので、僕自身も明確な結論を持ち合わせていません。ということで、以前よりユーロの研究者であった田中素香さん(ユーロ支持者)とジャーナリストの有田哲文さん(どちらかというと批判的な方)の本に依拠しつつ、論を進めたいと思います。
 構成としては、始めにユーロのメリットを説明し、次にギリシャの財政問題を簡単に俯瞰して、最後にギリシャ問題を絡めたユーロのあるべき姿というのを分析していきます。

 ユーロのメリット
ユーロが何なのかについての基本的な知識に関してはウィキペディアや池上さんらに譲るとして、ここではユーロのメリットについて説明します。

    域内経済の活発化
    通貨の安定化
    経済先進国の輸出増加
    基軸通貨としての地位確立
(参考:田中素香『ユーロ』)

    域内経済の活発化
これは、2つの観点から。
イ、個人消費の活発
今までは、マルクやフラン、ドラクマ(ギリシャの通貨)などがユーロ圏内で存在し、消費が思うように伸びませんでした。理由は手数料と為替相場リスクです。前者については例をあげましょう。フランス人が安いドイツ製品を買おうとした場合、彼は両替店で手数料込でマルクを買った後にドイツ製品をかうということになりますが、結果的にはそのドイツ製品が高いということケースもあります。それゆえに、消費が伸び悩みます。しかし一方で、ユーロで統一された後は、そのような手数料はありませんから、遠慮なくドイツ人でもギリシャ人でもポルトガル人でも安いドイツ製品を買えますので、消費が伸びます。
 もう1つの為替相場リスクに関して。いつでも為替相場(通貨の交換比率)は変わるリスク(可能性)というものを抱えています。最近の日本を考えてみると容易に理解できるでしょう。例えば、日本の円はこれから(極論ですが)70円さえも下回る可能性だってあります。その時、旅行者や輸入業者はどう考えるでしょうか。一番良い為替を待つために、消費(交換・輸入など)を控えるでしょう。その結果、消費が落ち込みます。しかしながら、ユーロが導入されてしまえば、消費は伸びます。なぜなら、ユーロ圏内でユーロは安定していて、為替リスクを持っていないですから(もちろん、ユーロ対ドル、円については依然と同様に為替相場リスクは内在していますが)

    通貨の安定化
通貨の安定化というのは、通貨の価値が急激に上がったり、下がったりすることが起こりにくくなるということです。アジア通貨危機の時に明らかになったように一時的な経済上の変化や投資家の行動によって、通貨価値というのは乱高下します(このことがアジア共通通貨の推進の大きな理由だったりするのは余談で)
複数存在す通貨を一つにまとめ、「強いユーロ」になるという詳しいプロセスは、国の信用力といった曖昧な概念や外貨準備高といった専門用語などを使う必要があり、おそらくディベートで求められうるマターを超えると思われるので、説明しませんが、複数存在する通貨を一つにまとめ、「強いユーロ」を作ることで、今まで通貨が不安定であった国に投資を呼び込みます。なぜなら、投資家は投資した企業の国の紙幣(通貨)が紙くずになることを今まで恐れていたからです。その結果、ポルトガルやイタリア、アイルランド、ギリシャ(頭文字をまとめてPIIGSと言われています)にて、大きな投資効果がありました。余談になりますが、オリンピック時にはその経済効果と相まってアテネにはポルシェなどの外車がありふれていたようです。
PIIGSという単語をみて、何か疑問に思った人がいるでしょうが、その疑問の解消はあとで解消します。


(続きます)


石渡慧一 
国際基督教大学卒業、東京大学公共政策大学院修士1年。2009年度ICUDS部長。Australs 2009 ESLブレイク、 All-Asian 2008 EFLブレイク(なお、この年の北東アジア参加者の中で1位)、NEAO 2009 EFL ブレイク、NEAO 2010 ジャッジブレイク