2012年12月22日土曜日

紅葉杯 Motion解説

10月に関西で開催された紅葉杯でCo-CAを務めさせていただきました、渡辺聡史です。本大会のモーションに関して出題者からの視点としてモーション解説をする機会をいただきましたので、予選から3つ、こちらに掲載させていただきます。参加された1年生みなさんの今後のために少しでもお役立ち出来れば嬉しいです。


THBT gifted students should be taught separately from their peers.

欧米など導入されている、いわゆる「ギフテッド・アンド・タレンテッド教育(GATEやTAG)」に関してのモーションです。Gifted studentsは、英才児、優秀児、天才児と解釈されます。その定義は国や地域によって異なるものの、一般的に知能検査によるIQなどを反映し、上位数%の児童が該当すると言われていま集められて、普段の授業よりも複雑で困難な学習課題に取り組むことになっていたり、個人の興味に合わせたプロジェクトや学習内容が選べるような環境が整えられています。

このディベートで特に重要であること、そして出題者として1年生のみなさんに意識をしてもらいたかった事は、Gov、OppそれぞれのサイドでProblemやHarmを具体的にイラストするということです。それは子供の将来などの時系列的な意味でも、実際の教育現場という意味でも言えることだと思います。
大きな争点は、多様性をどこまで認めた上で教育が与えられるべきか、ということだと思います。それぞれのサイドでどのような議論が展開できるか考えてみましょう。

・Govとしては、gifted studentsにとって同輩と受ける、均一な教育が如何に不適切であるかを分析しなければなりません。生まれながらにして平均より顕著に高い能力をもつ彼らにとっては、学習内容が本人の能力や興味とかけはなれているため、課題に集中できなかったり、周囲の誤解や批判を得るような反社会的な行動をとることが考えられます。例えば、繰り返しや暗誦することに非常な抵抗感を示したり、グループ共同作業ができずにクラスを乱す行動をとる子供などです。従って学業成績に支障が出たり、集団から孤立することも考えられます。また、逆に周囲に同化しようとするあまり、意図的に能力以下の成績を修めようとするあまりストレスを抱えてしまう児童も想定できます。
 従って他の生徒とは別に教育を受けることで、その高い能力に応じた教育内容を提供するだけでなく、ギフテッドゆえに経験する様々な学習や生活における困難をできるだけ軽減することができると言えます。
 ・教育というのは、個々の生徒が持つ才能や可能性を伸ばすものでありニーズを満たさなければならない、そのように平均的な教育にマッチしない子供の多様性を尊重する必要があるなどと議論が展開できるでしょう。その例として、障害児に対しての特別支援教育などが挙げられます。他の生徒と同じように教育を受けることが難しい、もしくは特別なケアが必要な児童のための学校が用意され、特別な施設や先生の元で教育が受けられています。

Oppサイドに視点を移してみましょう。
Gifted studentsにとって何故、大多数の標準的な生徒を中心にした同輩の子供と同じ環境で教育を受けるべきなのか、それができなくなると彼らや学校そのものにどのような問題が生じるのを示しましょう。様々な視点で議論を展開できると思います。
・ギフテッド教育を受けた子供は「普通の」学校や子供時代を体験し損ねてしまうことです。「普通」というのは、勉強・スポーツ・芸術、いかなる基準で様々な特徴を持っている生徒と触れ合いながら生活する機会を持つことで、自分以外にも多種多様な人や価値観が存在するということを身をもって学ぶことです。ごく限られた人間にしか認められないギフテッド教育は、その貴重な経験を享受できる学校教育の機会を奪ってしまうことになります。そうして年を重ねたgifted studentsがどのような大人になってしまうかイラストレーションすることによってこのポイントは非常に有効なものになると思います。
・他の生徒に目を向けると、クラス分けによる差別感が生まれるという批判に加えて、友人関係に亀裂が入る、自尊心を傷つける、下位グループとみなされた生徒達は学習意欲が減退するといったことも指摘できるでしょう。ギフテッド教育は、ギフテッドの生徒が仲間はずれにされたり、いじめの元凶になってしまうという問題を生み出してしまいます。
・教育の現場で不必要なトリアージが行われることも挙げられます。ギフテッド教育に充てる特殊なカリキュラムは学校や教育そのものが持つ人材や財源を吸い取ってしまい、他の生徒に渡るべき人的資源や経済的資源が減ってしまいます。障害児への特別支援とは、その必要性が全く異なるため、優先順位がさほど高くない、また勉学の面では学校以外の場面でギフテッドの生徒にも適切な負荷を伴うチャレンジをさせることができるなどと考えられます。

THBT all the judges and juries should be the same sex of victims in the trial of sexual crimes.

ここで意識してほしかったのは、チームとして守りたいstakeholderはどんな人なのか、チームとして守りたい価値は何なのか、なぜ守られなければならないのかを明確化してほしいということです。平等の重要性について議論する場合、何をもって平等なのか分析しなければなりません。

・Govは一貫して「性犯罪における被害者を裁判において守らなければならない」というシンプルなスタンスを敷くことができると思います。「なぜ性犯罪での裁判なのか」、「何故裁判官・裁判員が同性でなければならないのか」という理由付けをしっかりしていきましょう。
・そのために、性犯罪での裁判における被害者へのインパクトの大きさを説明しなければなりません。裁判に出て、自分が被害を受けたことを証言することは「セカンドレイプ」と言われることがあります。ただでさえトラウマになってしまうような忘れたい記憶を大勢の人の前で呼び起こされ、晒されてしまうからです。例えば、レイプにあった女性がいつ、どこで、どのように襲われたのかを詳細に思い出さなければなりません。場合によっては、実際に模型などを使って当時の状況の鮮明に再現をする場合もあります。重大なことは、裁判官が男性の時は、それを彼らに向かって行うということです。男性という存在自体に恐怖を覚えるような事件を体験した後、被害者の女性がどのような心理状態でしょうか。そういった理由から性犯罪を受けた約70%もの被害者は裁判にでることなく泣き寝入りをしてしまう現状があります。そのように行われる裁判が如何に被害者にとって公平でないか強調していきましょう。
 ・加えてAPについて、被害者にとって裁判がどのように変化するのかを説明していきましょう。その時に被害者と同性の裁判員が同情を抱きやすくなるという分析が両サイドともでると思いますが、Govはそれを肯定しなければなりません。例として、裁判員制度の導入目的というのはそもそも、法律家だけでなく一般市民に裁量を与えることで、市民の刑量感覚をより反映したいという意図があります。それと同じように、その同情というものは一般的な感覚を取り入れることに繋がり、むしろよいことだと言えると思います。

・Oppについては、裁判官・裁判員が全員、被害者と同性になってしまうことによって裁判の平等性がくずれてしまうという議論が展開できると思います。被告だけが男性、原告と裁判官、裁判員がすべて女という構図でどのようなことが起こるかということを明らかにする必要があります。
・まず大前提として「疑わしきは罰せず」という謳い文句のように、判決が出されるまで被告も原告同様に守られるべき存在であることを指摘しましょう。GovのAPのシナリオでも出てくる同性という存在であることから生まれる無意識な同情が、被告に明らかに不公平な判決や不必要な罰則が与えられてしまう。何をもって不公平、不必要とするかの説明は難しいですが、裁判での判決というのは過去の事例や科学的な根拠など客観的な判断基準に重きが置かれるものであり、感情的な要素を持ち込む事自体が危険であると言えるのではないでしょうか。
・更に、裁判員に選ばれた一般市民に心理的なプレッシャーを与えてしまうことに触れられれば有効だと思います。女性であるから女性が被害者の性犯罪の裁判員に選ばれたという事実は「原告を守らねばならない」というメッセージを帯びてしまいます。更に、法律のプロでない陪審員にとって裁判はまさしく非日常そのものであり、そのような場面で人は「かわいそうだ」などという感情に無意識に流されてしまうというメカニズムを深めることもできます。

THW drive out food companies once they deceive consumers.

予選のモーションの中で難しかったという声が最も挙がったモーションだったと思います。特にGovサイドにとってはハードなスタンスを取らなければならず、苦労した1年生も多かったのでないでしょうか。
モーションムービーにも銘菓「赤福」の食品偽装の件が出ていましたが、個人的に赤福は大好きなので非常にやりづらいと思います。冗談はさておき、ここでよく考えて欲しかったことはモーションのキーワードを大事にするということです。なぜ「food company」なのか、なぜ「once」、なぜ「drive out」でなければならないのか必ず触れなければならないと思います。

それぞれのサイドで議論を見てみましょう。
 Govですが、「食品偽装は絶対にあってはならない、したがって多少厳しいとしても追放は必要である」という開き直りのようなスタンスをとることになると思います。そのために、まずなぜ政府が食品偽装をする会社にこのようなハードなスタンスをとらなければならないのかという部分です。
・まず食品会社の特徴を捉えましょう。人々が毎日口にする商品を供給する責任というのはどのようなものでしょうか。また、食品以外の産業と比較して、企業と消費者の間で情報の対称性が保証されにくいといえるでしょう。
・そして賞味期限、生産地、原料の偽装などでは、食中毒などで健康被害がでることがない限り、直接的な被害にスポットライトがあたることが少なく判明しづらいと言えます。従って現状では内部告発による摘発に頼ることが多いですが、そもそもモラルに依存する内部告発に頼ること自体がスタンスとして弱いことに加え、内部告発者を保護するような法の整備が進んでいないのも現状です。
・資金繰りなどが行き詰まり、生き残りのために手を染めた食品偽装ですが、一度見つかってしまい、罰則を受けてしまっても時間の経過とともにほとぼりが冷めると、また偽装を行なってしまい連鎖を断ち切ることができないことも挙げられます。一度でも摘発されれば二度と戻ってくることはできないというAPでは非常に強い抑止を持つことになります。

Oppはいくつかの話で議論を展開できます。
・まず、「責任論として全ての従業員に影響を与えるプランはやりすぎではないか」ということです。そのために食品偽装がどのようなメカニズムで発生しているのかを説明する必要があります。よくあるケースとして、食品の管理などの決定権を持つ上司が出す命令に末端の従業員は従わざるを得なかったというものがあります。大多数が偽装の事実自体さえ知り得なかったこともあります。そのような背景で、すべての従業員や彼らの家族の人生に多大なインパクトをもたらすほど、責任を問うてもよいのかということが言えます。食品会社という集団において責任を持つべきなのは、誰なのか分析しましょう。

・そしてもう一つ、政府が徹底的に防止に努めるためにハードなスタンスが必要と言うGovに対して、「食品会社が市場に復帰するかどうか決めるのは、政府が一方的に決めるのではなく、消費者や市場原理に委ねるべき」とSQを肯定することです。消費者の信頼を裏切った時の影響が自分たちでわかっている以上、そもそも食品偽装は行わない。仮に行なったとしてもその時重要なのは適切な罰則を与え、反省・更生の機会を与えることであると主張できます。たとえば、先ほども出てきました赤福や、他にも雪印など過去に食品偽装があったものの、現在では復活しています。それは、SQの罰則での償いと更生の結果、消費者にもう一度受け入れられる企業像を取り戻すことができるからだという事ができます。




以上が解説となります。
上記以外にも様々な視点があると思いますのであくまでアイデアの一つとして役立てて頂ければ幸いです。

渡辺聡史
大阪府立大学工学部航空宇宙工学科
2012年度JPDU関西代表, 2011年度OPU Parliamentary Debate Chief,
紅葉杯2012 Co-Chief  Adjudicator,  JPDU Autumn Tournament 2012 Quarter Finalist

2012年11月19日月曜日

JWDC Motion解説


初めまして、1st Japan Women’s Debating ChampionshipCo-CAを務めました、東京大学4年の富田蓉佳です。ICUの織戸未幸ちゃんと、会議を重ねてモーションを決めました。大会から時間が経ってしまいましたが、モーションの解説をしたいと思います。

 

Round 1: THW legalize active euthanasia for terminally ill patients.

     R1のモーションは古典である THW legalize euthanasiaを少しひねったモーションです。Active euthanasiaとは積極的安楽死で、死を目指して積極的な行為(例えば死期を早める薬剤を投与すること)のことである。その対照がpassive euthanasia (消極的安楽死)であり、これは延命治療を中断するなど、間接的に死期を早める行為です。卒論でオレゴン州の尊厳死法について書いているので、ぜひ安楽死系のディベートが見たい、という個人的な理由で出しました(笑)

     このモーションは簡単に言うとfreedom of choice vs. paternalismというクラッシュになります。GOVからは、安楽死とは末期患者にとって選択肢の一つであり、自分にとって何が一番良い選択かは患者本人が一番よく知っているので、患者の判断に任せるべきである、というphilosophyを軸に議論を立てることができます。OGからおそらくこのphilosophyは出てくると思います。一方のOPPは、患者は冷静に物事を判断することができないので、政府が介入して安楽死のようなirrationalな選択をしないように守らなければならない、というスタンスが取れると思います。モーションにあるterminally ill patientsは特にどういう患者なのか、というuniqueness分析があればいいと思います(末期患者はうつ病であったり、冷静な判断をできる状況でなかったり、家族から安楽死を進められているなど)。

   次に、practical consequencesに入ります。まずGOVからは:

  ①    末期患者が尊厳を保って死ぬことができる

このポイントは末期患者が自分の意志で安楽死を選択した、ということが前提になります。SQでは病院の中で様々な機械につながれて、一人で移動や食事ができないなど、著しくquality of lifeが悪化して人間としての尊厳が保たれていない患者が安楽死を選択することによって、現状の生活から解放される、というbenefitを挙げられます。SQが患者にとって良くないというイラストがあれば効果的だと思います。

OPPからは:

    安楽死という選択はcoercionかもしれない

ここではまずGOVが「安楽死は患者が自分の意志で決めたものだから尊重するべき!」という前提にdoubtをかけます。治療費が莫大の場合や遺産相続などの理由で患者の家族が安楽死を薦めてくることも考えられます。このような状況で患者が安楽死を選択した場合は、本当に自分の意志とは言えません。こういうharmが起きるからこそ、安楽死は選択肢として与えるべきでない、という議論が出来ます。

    病気が治る可能性、または誤診がある

余命宣告が必ず当たるわけではないので、病気が治る可能性はあります。また、誤診という可能性もあります。仮に治る可能性や誤診の可能性が1%と低いものであっても、患者が健康になるかもしれません。しかし、安楽死を導入してしまうと、患者は余命宣告をそのまま受け止めてしまい、治る可能性や誤診があっても諦めて安楽死を選択してしまう可能性があります。このようなことを防ぐために、最初から安楽死は禁止する、と言えます。

「クロージングには厳しい」という意見もアンケートでいただきましたが、クロージングで出来るのはterminally ill patientsというはどういう人なのか、重度の病気を患っている患者とどう違うのか、や医師のroleは何なのか、など、個々のアクターを分析することだと思います。BPの難しさの一つは、extensionだと思います。クローシングでラウンドに貢献する練習になって欲しいな、という思いでこのモーションを出しました。

 
Round 2: THW not expel Roma people from the country in the EU in exchange for sending their children to state boarding schools.

   このモーションはAC陣オリジナルのモーションです。Roma people, EU, state boarding schoolsと、色々な単語が出てきて複雑なワーディングでしたが、訳すと「ロマの人々が国が運営する寄宿学校に自分の子供を入れる代わりに、国が彼らを強制送還をしない」になります。
 コンテキストはフランスで行われているロマの強制送還です。少し背景説明をしますと、ロマとは移住型民俗です。彼らはヨーロッパで激しい迫害と差別を受けた過去があり、現在でも迫害と差別は続いています。近年ヨーロッパには1200万人程の人口があり、フランス政府によると、そのうちの約15000人がフランスにいます。ロマはヨーロッパの国々で迫害を受け、貧困や低識字率に苦しんでます。2010年にフランスはロマが住んでいる不法住居キャンプを取り壊し、ロマをルーマニアとブルガリアへと強制送還する政策を始めました。ロマがいると治安が悪化する、という理由で始めたフランスの政策は、世界中から人権侵害である、と非難されています。

      GOVとして取れるスタンスは、「social integrationは大事」というものです。EUの国のboarding schoolにロマの子供を入れることによって、ロマの子供達はその国の言語、歴史、価値観、文化などを学ぶことができ、それらを学ぶことによって社会に出て暮すことができるようになります。現状でロマの人々は教育へのアクセスがなかなかないため、社会に出ても職を得られず、生活することが困難になっています。いかに教育が重要か、という説明がここでは必要だと思います。なのでGOVとしては:

    SQの説明

ロマがどういう人達なのか、現状ではどのような状況に置かれているのか、などをまず説明すること。

    Why integration to European society is important

どうしてboarding schoolに入れてまで、教育をしなければならないのか、という説明です。学校で言語、歴史、価値観、文化などを学ぶことによって、ロマの子供達は将来社会に出るための準備ができます。長年の迫害によって、ロマの子供達はヨーロッパの子供達と同じスタートラインに立っていません。だからこそ、EUの国の教育を受けて、少しでも同じスタートラインから出発できるようにすることが必要である、という議論ができると思います。教育を受けるベネフィット、そして教育を受けないハームまで説明できると強くなると思います。

             
  OPPとしては少し議論しにくいと思いますが、forced integrationはロマにとってharmfulである、という議論ができると思います。確かにモーションでは、子供を学校に入れる代わりにヨーロッパの国に住むことが認められますが、自分の子供を異なる文化の学校に入れることはどういう意味か、ということを考えるのが重要だと思います。Boarding schoolだと一年の大半を親元を離れて暮らすので、ロマの文化に触れる機会が少なくなってしまいます。更に子供達はホスト国の価値観や文化に常に浸っているので、ロマの文化を学ぶことを嫌がるかもしれません。「ロマの文化は大切!」だけでは不十分なので、どうしてロマの文化がロマにとって重要なのか、どうしてその伝統であったり生活習慣が失われてしまうといけないのか、どうしてロマの子供達がロマの文化を学ぶことによってロマ文化の継続につながるのか、などの説明もしましょう。

 
Round 3: THBT the feminist movement should oppose affirmative action for women.

    JWDCは女性ディベーターのための大会でしたので、一つは女性関係のモーションを出したいと思い、このモーションにしました。現在、女性枠であったり、女性を優遇する制度が度々見られますが、これは本当に女性のためになっているのでしょうか。このような制度は女性の活躍を妨げているのではないのか、など、一人の女性として色々考えさせられるモーションだと思います。

    このモーションの基本はfemale quotaaffirmative actionのモーションとほとんど同じですが、注目していただきたい点は、feminist movementです。単にTHW introduce affirmative action for women、ではなく、フェミニスト観点からAAを見たとき、それは女性にとって良いものなのか、それともそうでないのか、という議論もして欲しいと思います。

まず、GOVではaffirmative actionは女性の活躍を妨げている、というスタンスを取ると思います。

     Affirmative actionがあるため、女性はいつまでも周囲に見下されてしまう

Affirmative action(積極的優遇)を取り入れると、女性の雇用や教育の機会は増えますが、一方で女性の実力ではなく、AAによってその内定や大学の席を確保したと思われる可能性があります。女性の能力が無視されて、どんなに頑張っても「AAのおかげで入れた」というレッテルが貼られてしまいます。これは今後女性が活躍するためへのハームになってしまう、という議論ができると思います。

     Affirmative actionは女性と男性が平等でないことを認めている≠feminist movement

これはAAのベネフィット・ハームを分析するのではなく、フェミニストの観点から見たときに議論できるポイントだと思います。フェミニズムは女性解放の思想・運動であり、様々な局面(政治的、社会的、法的、性的など)の自己決定権を求める運動を展開しました。中でも法における男女平等の実現を目指してきました。AAは「現状で女性と男性は平等でないので、積極的な優遇を行って男女平等を実現しよう!」という政策なので、フェミニストのスタンス(=男女平等)とは若干ずれています。なので、フェミニスト達がAAを支持するのは、フェミニスト達が長年戦ってきた思想と異なる、という分析ができると思います。

 
    OPPに関しては、AAの必要性とそのベネフィットをベースにした議論が重要です。

     現状では男女は不平等であり、その不平等を解消するためにAAが必要

現状で男性と女性が完全に平等である、とは言い切れません。例えば企業の採用を見ると、ほとんどの場合女性よりも男性の採用の方が多いです。企業の管理職を見ても、男性の方が圧倒的に多いです。この問題を根本的に解決するためには、女性に機会を与える必要がり、その機会を与えるのが、AAである、という考えです。

     AAがあるから、女性の機会が増えている

実際に雇用や大学受験で女性のAAを行うことによって、女性が大学に入学したり、大企業に就職して、活躍しています。彼女達のイラストを挙げて、AAのベネフィットを説明することができます。

他にも両サイドから色々言えるポイントはあると思いますが、基本はこのような感じだと思います。メインのフィロソフィーはオープニングで出てしまう可能性が高いですが、クロージングはその分、細かいアクターの分析やイラストができると思います。

 
GF: THBT the international community should use bounty hunters to capture or kill enemies.

  GFは面白いモーションを出そう!ということで、このモーションにしました。モーション会議で一番最初に決定したモーションです(笑)

   議論の軸としては、インターナショナル・コミュニティが敵や犯人を捕まえて国を守るために、どこまで権限を拡大していいのか、bounty hunterとはどういう人達なのか、利用する必要性はどれほどあるのか、というところになると思います。

   まずGOVでは、危険な敵(テロリストなど)を捕まえるためには、現状の方法では不十分なため、bounty huntersが必要、という視点が重要です。

    政府(インターナショナル・コミュニティ)は市民を守る必要がある

政府には自国の市民を守る必要があり、インターナショナル・コミュニティ(IC)には世界の人々の安全を保障する役目があります。そのような義務を担っている政府・ICは、どんな手段を用いても安全を確保する必要がある、という議論です。

    現状の手段では敵を捕まえることが困難

今回のモーションの対象はテロリストだと思います。例えば、テロリストの幹部などは自爆テロの計画立てて、その計画が部下によって実行された時に多くの犠牲が出てしまいます。そのため、部下だけでなく、幹部を捕まえることが重要になります。ただ、SQの手段では捕まえることが非常に困難なので、bounty huntersを利用する→犯人捕まえる→市民の安全を確保する、という流れの議論です。

    Bounty huntersとは何か?

重要になるのは、bounty huntersの分析だと思います。どうしても映画や漫画に出てくる人達の印象が強いですが、彼らをどうイラストするかによって、ラウンドが左右されると思います。GOVではbounty huntersとは警察や軍隊が入れないようなところに潜入し、テロリストを捕まえることができる、や、現地のコネクションが豊富なのでテロリストに関する情報を入手しやすい、など、bounty huntersuniquenessを出すと効果的だと思います。一つの例ですが、アメリカの賞金稼ぎは保釈保証業者(保釈金を立替する人)から逃亡した人を捕まえるのが主な仕事です。彼らは警察と違って、州を跨いで追跡をすることができるので、州の警察よりも効率良く逃亡者を捕まえることができます。

 
     一方OPPは現状肯定をベースにした議論ができます。

    犯人を捕まえるのは国の警察、軍隊で十分できる

現状のシステムを肯定する議論です。現状では国の警察や軍隊・特殊部隊が犯人を捕まえて、国で裁きますが、このように国際法を則った手段で犯人を捕まえるべきである、という議論です。国やICが捕まえることによって、彼らにはaccountabilityがありますが、bounty huntersを利用すると彼らには責任が問われないからです。

    Bounty huntersとは何か?

OPPからは、GOVが提示したbounty huntersの分析を否定し、自分達の分析を出すのが重要です。実際bounty hunterには誰でもなれるので(アメリカの一部では試験があるみたいです)、軍隊のようにしっかりと訓練を受けたわけでもなく、ただお金の為に動いている人である、というcharacterizationができます。Accountabilityがないのでテロリストを捕まえるために一般市民を傷つけたりしてしまう可能性がある、などのイラストができると思います。このように、bounty huntersを使用することによって状況が悪化してしまう、というような議論につなげられたら更に効果的です。

 

JWDCの決勝では、bounty huntersの様々な分析が出て、特にクロージングでもbounty huntersを利用することによるベネフィットやハームの深い分析が出ていたので、とてもいいディベートだったと思います。

 
以上がモーション解説になります。もちろんここに書いてある分析以外にも、たくさんargumentはあると思いますので、プレパ練をやって色々考えてみてください^^ 今回の解説が参考になれば幸いです!

 

富田

2012年10月19日金曜日

MDI 再スタートのご挨拶

お久しぶりです!東京大学4年の加藤彰です。

このたび、The Marketplace of Debating Ideasは、「多様なディベートに関する理論・考え方等を提供するプラットフォームをつくることで各ディベーターの成長に寄与する」という理念の下、4人のCore Memberにより運営を再開することに致しました。

メンバーは、以下の4人です。(アルファベット順)

Naoki Iwasaki / 岩崎直希 (Seikei) 
Tomomi Sakurai / 櫻井智美  (Tokyo) 
Tomoya Yonaga / 世永智也 (Hitotsubashi) 
Yongrak Jeong / ジョン・ヨンラク (Kyoto)


以上4名が、記事の執筆・依頼の中心的役割を果たすことになります。どうぞよろしくお願い致します。なお、私は監査という形で運営に携わらせていただきます。

では、4人からのメッセージです!



Naoki Iwasaki / 岩崎直希 (Seikei) 

成蹊大学二年の岩崎直希です。ケビンといった方が分かる方も多いと思います。まだまだディベーターとして未熟ですが、このブログが皆さんのディベートライフをより豊かに、楽しくする一助となれるよう頼もしい3人のMDI Core Memberとともに頑張っていきたいと思います。よろしくお願いします!


Tomomi Sakurai / 櫻井智美  (Tokyo) 

UTDS2年の櫻井智美と申します。この度MDIに半年ほど参加させていただくことになりました。発展途上にある私がこのような運営に携わることにおこがましさを感じる一方、謙虚に学べる好機をいただけたとも感じております。ディベートに対しての思い入れや考え方、環境などは人それぞれ違うと思います。MDIができる限り幅広い人が情報を発信、取得する場所になるように、精進する所存です。そのためできるだけ多くの方に意見を伺いたいと考えております。お力添えよろしくお願いします。至らないところが多いとは思いますが、ご意見ご指導よろしくお願いします。


Tomoya Yonaga / 世永智也 (Hitotsubashi) 

一橋大学二年の世永です。ディベーター/ジャッジとしてまだまだ未熟ながらもベストを尽くしていきたいと思います。MDIが多くのディベーターにとって有益な場所になるよう頑張りますので、是非よろしくお願いします。


Yongrak Jeong / ジョン・ヨンラク (Kyoto)

京都大学2年のジョン・ヨンラクと申します。ディベート2年目、ということで、まだまだディベートに関してわかってないし、実績もあまりないんですが、「いろいろな方と考えを共有していく中でディベートを学んでいきたい」という感じでMDIのメンバーに参加させていただきました。

自分は京都大学所属で、関西圏のディベーターと話したり、ラウンドをしたりする機会が多いんですが、話を聞いてみると部員が少なかったり、レクチャーしてくださる先輩がなかったりで苦労しているという場合も多くあり、それを何とかしたいという声が非常に大きいと感じました。このブログがそのような方に少しでも役に立てればいいなと個人的には思っております。いろいろな方からの様々な情報をブログで共有することで、もうちょっと多くのディベーターが成長できたらなぁと思います。
それでは、よろしくお願いします!



それでは、今後ともMDIをよろしくお願い致します。
早速、「Philosophy」や「BPのStrategy」などのテーマの記事の執筆・依頼を始めているようなのでどうぞご期待ください!

2012年5月14日月曜日

けいいちさんの個人ブログの連絡

☆ なにかあれば、Keiichi Ishiwataさんに連絡するか、ここに書いてください!Facebookでブログの執筆を続けるとのことですので、興味があるかたは検索を!




以下、けいいちさんより転送です。


またディベート系ブログやりますので、僕の名前でFacebookで検索してグループにアクセスしようとしてください。素性が分からない人は流石に承認しませんが、基本的にはOKにしますので。特に以下の人におすすめ。
・今までのブログの続きが読みたい人
・石渡のブログを批判してみたい人
・ディベートが好きな人

2012年3月28日水曜日

今後の運営方針に関して

お久しぶりです。MDIの管理人の加藤です。
当初予定していたように、このプロジェクトは6ヶ月で一応終了とさせて頂きますが、
Facebookで多くの方から続きを読みたいという声が大きかったこともあり、不定期に特別更新を行っていく方針になりました。
更新頻度は下がると思いますが、少しでもディベート界の発展につながれば幸いです。

TANACUP 2011 モーション解説 前編


遅くなりました。きっと加藤は怒っていることと思います。()
今回のタナカップは世界大会に向けた準備ということで、モーションもJapan BPのやや斜め上をいく難しさをイメージして考えました。拙いですが、参考にしてもらえたらと思います

R1
THW prosecute citizens who acted as human shields.

コンテキストとしてはパレスチナやリビアです。ガダフィーがhuman shieldを使ったのは1年ほど前に話題になりました。細かい話は割愛しますが、気になる人はウィキペディア(英語版)で調べてください、けっこう出てきます。
Govとしては、まずpunishではなくprosecuteであることがポイントだと思います。全員を審議なしに無罪にするのではなく、とりあえずcourtに送る必要性はあるという発想からargumentが出てくると思います。
①戦争が長期化し、被害が拡大した。(consequence
指導者を捕まえることがなかなかできないために、周辺地域での紛争は続き被害は拡大します。これはHarm to othersに当てはまると言えます。ここで重要なのはhuman shieldのため、戦争の収束が遅くなっているということを証明することです。当たり前のようで、意外とイラストが重要なので考えてみてください。
human shieldに関わった人の意志は分からない。(incentive
確かに一般人が巻き込まれる形でhuman shieldとなった場合もありますが、そうではないケースもあります。つまり、自由意志で加担したということです。実際、リビアの場合もガダフィー軍の武器庫を守っていた市民もいたようで、courtに送って審議する必要はあるということになります。ここで重要なのは、ガダフィー軍などの攻められている側に加担することがprosecute(この場合はpunishでもいいかもしれません)に値することを証明する必要があります。僕が見たラウンドでは、この点をOppはうまく突いていたように思います(後述)。さて、実際に攻められている時点で、多くの場合は倒すべき悪だと認識しているということが言えます。その悪に加担することは罪だとなります。事例やイラストを引っ張ってください。
warにおけるcivilianの位置づけ
戦争において、一般市民には攻撃を受けないという絶対的な保護が与えられています。これにより戦場において市民は大きなadvantageを利用して、その結果human shieldのようなmilitary operationを阻害することにつながっているという考え方です。そのインバランスを整えることがprosecuteだとも言えます。これも兵士が攻撃できないことで受ける損失を上手くイラストする必要があります。

なんとなく煮え切らない感じですが、Oppに移ります。

Oppとしては、Govと同じくprosecuteまでopposeする必要があります。
Freedom of Expression
human shieldは1つの表現だというアイディアです。たとえ世界を敵に回している独裁者であろうと、市民は誰を支持しても構いません。問題は、ⅰ)支持の方法としてこれが適当かということ、ⅱ)独裁者を支持する権利はあるのかということです。特に、軍が侵攻して来ている状況では市民にできることはかなり限られています。実質的な効果を上げるためには、軍の前に出て命を張るしかないと言えます。さらに、独裁者を打倒しても将来が望ましいとは限らないと言えます。ここでイラクの例は使えると思うので、調べてみてください。
あと小さいですが、自分のpropertyを守るという名目でhuman shieldとなっている人もいると思うので、多くのケースが想定できます。
また、

こんな感じで、細かいイラストやリーズニングを考えていくとクロージングまで残るかなぁというかなり楽観的な思考で出してみました。


R2
THW prohibit credit rating companies from downgrading the debt of countries which are in the process of fiscal reconstruction with the assistance of the IMF.

最初はtechnocracyを出そうとしたのですが、直前の海外大会で出てしまったので、差し替えました。ちなみに最初は「格付け会社ではなくIMFに評価させる」というモーションでしたが、なんか違いが見えにくいという不平・不満により、えーい、完全に禁止じゃー!という勢いで誕生した力作です()
コンテキストとしてはギリシャです。国債の評価によって金利なども決定されるため、社会に与える影響は大きいと言えます。

Govとしては、IMFだけでは不十分という視点が大切です。
ⅰ)人々がまだ国債を買ってくれる。
信頼があるということで、国に投資してくれるということです。個人向け国債には特に影響を及ぼすと思います。
ⅱ)企業の誘致もしやすい。
国債の評価は国の通貨や組織そのものに対する信頼性にも関わっていると考えられます。一定の評価を得られれば、特に海外からの企業がビジネスを展開しやすくなると思います。
ⅲ)長期的にみて国債を返済しやすい。
格下げされないために利率が高くなることを防げるので、国債の返済もしやすくなります。特に経済の再建は長期的な課題となるので、長期的な負担を減らしていくことは大切だと言えます。
ここで、格付け会社の自由を奪っていることに注意しなければなりません。社会に与える影響が大きいから介入はOKというだけでは味気ないので、そもそも格付け会社のビジネスは各国の経済が成り立っている(存在している)から可能だとかいったもっともらしい理由も加えるようにしてもらえると嬉しいです。

Oppとしては、逆に投資が減ってしまうということがベースです。
ⅰ)買い手が正しい情報をもとに判断できない。
例えばAPではIMFが介入している国の国債がBランクで固定されたとしましょう。Bランクかもしれないし、それよりも下かもしれないというあやふやな情報しかアクセスできません。その結果、国債を買わないという選択をとることになります。(ちなみにそれでも買うというのがGovの主張です。)この辺りはイラストが重要です。この発想の前提として、格付け会社の信用はかなり高いということがあります。数年かけて調査を行い、国債の信用度を決定しているようです。日本についても震災、赤字の増加、不安定な政局といった包括的な理由により格下げが決まったそうです。多くの人がこの情報に頼っているからこそ、情報の質は保つ必要性があるということになります。
ⅱ)短期的な資金調達をしにくくなる。
若干うそくさいですが、上述したように評価が低いと利率が高いので、買ってくれる人が増えるというアイディアです。
ⅲ)自由や権利についての話。
会社の評価を付けるという自由が侵害されています。また、市民の知る権利が侵害されています。確かにGovが言うようにfiscal reconstructionが達成できればいいかもしれないが、100%ではありません。もし、他の要因(災害など)で事態が悪くなったらどうでしょう。格付け会社は自社の信頼を失い、国債を買った市民も経済的損失を受けます。これは政府が規制したからです。third partyをこういったリスクにさらすことは正当化できません。なぜなら、IMFの介入が必要となったのはこの投資家や格付け会社の責任ではないからです。自己責任論の延長です。うまくパッケージすると、格好いいargumentになるのではないでしょうか()

クロージングは結構きつそうで、申し訳ありません。

(続きます)

石河敏成 東京大学薬学部3年。Tanacup Chief Adjudicator。 BP Novice 2011、Japan BP 2011, 21st ICU Tournamentでもジャッジブレイク。
Spring JPDU Tournament 2010準優勝、North East Asian Open 2010 EFL準優勝。

2012年3月1日木曜日

Adjudication Core Manual

BP Novice 2011でCAをやった後に、参考になればと思いすべての大会で使えそうなAdjudication Core Manualを作成しました。
大会運営やACをやる際に少しでも皆様の助けになればと思います。


https://docs.google.com/file/d/0B123uRi9tgeuajdpdk9RMDdRN09sWmlFYlVPLS10UQ/edit

2012年1月1日日曜日

アンケートのご協力のお願い

2012年になりました。今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

MDIに関してですが、今執行部で今後も続けるか続けないかの議論をしています。

sこで、あなたの声を是非とも聞かせてください!Facebook上で集計をしておりますので、是非ともお願いします。http://www.facebook.com/groups/165600013509961/

期限は1/10です!

Facebook Accountがない方は、marketplace.debate[@]gmail.comに送っていただいても構いません!([]を外してください)

尚、質問は「あなたにとってのMDIの位置づけは?」で、

回答候補は、

全く興味がない。そもそもあったの?

読んだことはあるが、あまり参考にしていない

何回かは読んだことがあり、ほどほどには参考にしている。

2、3回読んだことはあるが、特に何も思っていない。

1週間~2週間に1回読んでおり、参考にしている

更新の度に読んでおり、非常に参考にしているが、なくても構わない。

毎回更新を楽しみにしており、今後も絶対に続けて欲しい

です!