初めまして、1st
Japan Women’s Debating ChampionshipのCo-CAを務めました、東京大学4年の富田蓉佳です。ICUの織戸未幸ちゃんと、会議を重ねてモーションを決めました。大会から時間が経ってしまいましたが、モーションの解説をしたいと思います。
Round 1: THW legalize active euthanasia for
terminally ill patients.
R1のモーションは古典である THW legalize euthanasiaを少しひねったモーションです。Active euthanasiaとは積極的安楽死で、死を目指して積極的な行為(例えば死期を早める薬剤を投与すること)のことである。その対照がpassive euthanasia (消極的安楽死)であり、これは延命治療を中断するなど、間接的に死期を早める行為です。卒論でオレゴン州の尊厳死法について書いているので、ぜひ安楽死系のディベートが見たい、という個人的な理由で出しました(笑)
このモーションは簡単に言うとfreedom of choice vs.
paternalismというクラッシュになります。GOVからは、安楽死とは末期患者にとって選択肢の一つであり、自分にとって何が一番良い選択かは患者本人が一番よく知っているので、患者の判断に任せるべきである、というphilosophyを軸に議論を立てることができます。OGからおそらくこのphilosophyは出てくると思います。一方のOPPは、患者は冷静に物事を判断することができないので、政府が介入して安楽死のようなirrationalな選択をしないように守らなければならない、というスタンスが取れると思います。モーションにあるterminally
ill patientsは特にどういう患者なのか、というuniqueness分析があればいいと思います(末期患者はうつ病であったり、冷静な判断をできる状況でなかったり、家族から安楽死を進められているなど)。
次に、practical consequencesに入ります。まずGOVからは:
① 末期患者が尊厳を保って死ぬことができる
このポイントは末期患者が自分の意志で安楽死を選択した、ということが前提になります。SQでは病院の中で様々な機械につながれて、一人で移動や食事ができないなど、著しくquality of lifeが悪化して人間としての尊厳が保たれていない患者が安楽死を選択することによって、現状の生活から解放される、というbenefitを挙げられます。SQが患者にとって良くないというイラストがあれば効果的だと思います。
OPPからは:
①
安楽死という選択はcoercionかもしれない
ここではまずGOVが「安楽死は患者が自分の意志で決めたものだから尊重するべき!」という前提にdoubtをかけます。治療費が莫大の場合や遺産相続などの理由で患者の家族が安楽死を薦めてくることも考えられます。このような状況で患者が安楽死を選択した場合は、本当に自分の意志とは言えません。こういうharmが起きるからこそ、安楽死は選択肢として与えるべきでない、という議論が出来ます。
②
病気が治る可能性、または誤診がある
余命宣告が必ず当たるわけではないので、病気が治る可能性はあります。また、誤診という可能性もあります。仮に治る可能性や誤診の可能性が1%と低いものであっても、患者が健康になるかもしれません。しかし、安楽死を導入してしまうと、患者は余命宣告をそのまま受け止めてしまい、治る可能性や誤診があっても諦めて安楽死を選択してしまう可能性があります。このようなことを防ぐために、最初から安楽死は禁止する、と言えます。
「クロージングには厳しい」という意見もアンケートでいただきましたが、クロージングで出来るのはterminally ill patientsというはどういう人なのか、重度の病気を患っている患者とどう違うのか、や医師のroleは何なのか、など、個々のアクターを分析することだと思います。BPの難しさの一つは、extensionだと思います。クローシングでラウンドに貢献する練習になって欲しいな、という思いでこのモーションを出しました。
このモーションはAC陣オリジナルのモーションです。Roma people, EU, state boarding schoolsと、色々な単語が出てきて複雑なワーディングでしたが、訳すと「ロマの人々が国が運営する寄宿学校に自分の子供を入れる代わりに、国が彼らを強制送還をしない」になります。
コンテキストはフランスで行われているロマの強制送還です。少し背景説明をしますと、ロマとは移住型民俗です。彼らはヨーロッパで激しい迫害と差別を受けた過去があり、現在でも迫害と差別は続いています。近年ヨーロッパには1200万人程の人口があり、フランス政府によると、そのうちの約1万5000人がフランスにいます。ロマはヨーロッパの国々で迫害を受け、貧困や低識字率に苦しんでます。2010年にフランスはロマが住んでいる不法住居キャンプを取り壊し、ロマをルーマニアとブルガリアへと強制送還する政策を始めました。ロマがいると治安が悪化する、という理由で始めたフランスの政策は、世界中から人権侵害である、と非難されています。
GOVとして取れるスタンスは、「social integrationは大事」というものです。EUの国のboarding schoolにロマの子供を入れることによって、ロマの子供達はその国の言語、歴史、価値観、文化などを学ぶことができ、それらを学ぶことによって社会に出て暮すことができるようになります。現状でロマの人々は教育へのアクセスがなかなかないため、社会に出ても職を得られず、生活することが困難になっています。いかに教育が重要か、という説明がここでは必要だと思います。なのでGOVとしては:
①
SQの説明
ロマがどういう人達なのか、現状ではどのような状況に置かれているのか、などをまず説明すること。
②
Why integration to European
society is important
どうしてboarding schoolに入れてまで、教育をしなければならないのか、という説明です。学校で言語、歴史、価値観、文化などを学ぶことによって、ロマの子供達は将来社会に出るための準備ができます。長年の迫害によって、ロマの子供達はヨーロッパの子供達と同じスタートラインに立っていません。だからこそ、EUの国の教育を受けて、少しでも同じスタートラインから出発できるようにすることが必要である、という議論ができると思います。教育を受けるベネフィット、そして教育を受けないハームまで説明できると強くなると思います。
Round 3: THBT the feminist movement should
oppose affirmative action for women.
JWDCは女性ディベーターのための大会でしたので、一つは女性関係のモーションを出したいと思い、このモーションにしました。現在、女性枠であったり、女性を優遇する制度が度々見られますが、これは本当に女性のためになっているのでしょうか。このような制度は女性の活躍を妨げているのではないのか、など、一人の女性として色々考えさせられるモーションだと思います。
このモーションの基本はfemale quotaやaffirmative actionのモーションとほとんど同じですが、注目していただきたい点は、feminist movementです。単にTHW introduce affirmative action
for women、ではなく、フェミニスト観点からAAを見たとき、それは女性にとって良いものなのか、それともそうでないのか、という議論もして欲しいと思います。
まず、GOVではaffirmative actionは女性の活躍を妨げている、というスタンスを取ると思います。
①
Affirmative
actionがあるため、女性はいつまでも周囲に見下されてしまう
Affirmative
action(積極的優遇)を取り入れると、女性の雇用や教育の機会は増えますが、一方で女性の実力ではなく、AAによってその内定や大学の席を確保したと思われる可能性があります。女性の能力が無視されて、どんなに頑張っても「AAのおかげで入れた」というレッテルが貼られてしまいます。これは今後女性が活躍するためへのハームになってしまう、という議論ができると思います。
②
Affirmative
actionは女性と男性が平等でないことを認めている≠feminist movement
これはAAのベネフィット・ハームを分析するのではなく、フェミニストの観点から見たときに議論できるポイントだと思います。フェミニズムは女性解放の思想・運動であり、様々な局面(政治的、社会的、法的、性的など)の自己決定権を求める運動を展開しました。中でも法における男女平等の実現を目指してきました。AAは「現状で女性と男性は平等でないので、積極的な優遇を行って男女平等を実現しよう!」という政策なので、フェミニストのスタンス(=男女平等)とは若干ずれています。なので、フェミニスト達がAAを支持するのは、フェミニスト達が長年戦ってきた思想と異なる、という分析ができると思います。
①
現状では男女は不平等であり、その不平等を解消するためにAAが必要
現状で男性と女性が完全に平等である、とは言い切れません。例えば企業の採用を見ると、ほとんどの場合女性よりも男性の採用の方が多いです。企業の管理職を見ても、男性の方が圧倒的に多いです。この問題を根本的に解決するためには、女性に機会を与える必要がり、その機会を与えるのが、AAである、という考えです。
②
AAがあるから、女性の機会が増えている
実際に雇用や大学受験で女性のAAを行うことによって、女性が大学に入学したり、大企業に就職して、活躍しています。彼女達のイラストを挙げて、AAのベネフィットを説明することができます。
他にも両サイドから色々言えるポイントはあると思いますが、基本はこのような感じだと思います。メインのフィロソフィーはオープニングで出てしまう可能性が高いですが、クロージングはその分、細かいアクターの分析やイラストができると思います。
GFは面白いモーションを出そう!ということで、このモーションにしました。モーション会議で一番最初に決定したモーションです(笑)
議論の軸としては、インターナショナル・コミュニティが敵や犯人を捕まえて国を守るために、どこまで権限を拡大していいのか、bounty hunterとはどういう人達なのか、利用する必要性はどれほどあるのか、というところになると思います。
まずGOVでは、危険な敵(テロリストなど)を捕まえるためには、現状の方法では不十分なため、bounty huntersが必要、という視点が重要です。
①
政府(インターナショナル・コミュニティ)は市民を守る必要がある
政府には自国の市民を守る必要があり、インターナショナル・コミュニティ(IC)には世界の人々の安全を保障する役目があります。そのような義務を担っている政府・ICは、どんな手段を用いても安全を確保する必要がある、という議論です。
②
現状の手段では敵を捕まえることが困難
今回のモーションの対象はテロリストだと思います。例えば、テロリストの幹部などは自爆テロの計画立てて、その計画が部下によって実行された時に多くの犠牲が出てしまいます。そのため、部下だけでなく、幹部を捕まえることが重要になります。ただ、SQの手段では捕まえることが非常に困難なので、bounty huntersを利用する→犯人捕まえる→市民の安全を確保する、という流れの議論です。
③
Bounty huntersとは何か?
重要になるのは、bounty huntersの分析だと思います。どうしても映画や漫画に出てくる人達の印象が強いですが、彼らをどうイラストするかによって、ラウンドが左右されると思います。GOVではbounty huntersとは警察や軍隊が入れないようなところに潜入し、テロリストを捕まえることができる、や、現地のコネクションが豊富なのでテロリストに関する情報を入手しやすい、など、bounty huntersのuniquenessを出すと効果的だと思います。一つの例ですが、アメリカの賞金稼ぎは保釈保証業者(保釈金を立替する人)から逃亡した人を捕まえるのが主な仕事です。彼らは警察と違って、州を跨いで追跡をすることができるので、州の警察よりも効率良く逃亡者を捕まえることができます。
①
犯人を捕まえるのは国の警察、軍隊で十分できる
現状のシステムを肯定する議論です。現状では国の警察や軍隊・特殊部隊が犯人を捕まえて、国で裁きますが、このように国際法を則った手段で犯人を捕まえるべきである、という議論です。国やICが捕まえることによって、彼らにはaccountabilityがありますが、bounty huntersを利用すると彼らには責任が問われないからです。
②
Bounty huntersとは何か?
OPPからは、GOVが提示したbounty huntersの分析を否定し、自分達の分析を出すのが重要です。実際bounty hunterには誰でもなれるので(アメリカの一部では試験があるみたいです)、軍隊のようにしっかりと訓練を受けたわけでもなく、ただお金の為に動いている人である、というcharacterizationができます。Accountabilityがないのでテロリストを捕まえるために一般市民を傷つけたりしてしまう可能性がある、などのイラストができると思います。このように、bounty huntersを使用することによって状況が悪化してしまう、というような議論につなげられたら更に効果的です。
JWDCの決勝では、bounty huntersの様々な分析が出て、特にクロージングでもbounty huntersを利用することによるベネフィットやハームの深い分析が出ていたので、とてもいいディベートだったと思います。
富田