2011年9月4日日曜日

労働組合 (後編)

以上が、今回の労働組合モーションの分析でした。多少、議論が専門的で話がずれた所が多かったので、汎用性が高い話とこの原稿の注意点をいくつか添えて、結びとします。



1.Be Specific!!
こんな長文を書いているのも一つ理由があります。一つのモーションにはこれぐらい真剣に向き合ってほしいという希望です。具体的に真剣に向き合うというのは、リーズニングを深めることと具体例を見つけることです。深いリーズニングに関しては、1回目と2 回目を読んで、鋭い人は気付いたと思いますが、経済系のモーションも突き詰めてみると、ディベートでよく議論される人間の合理性というところに結構、ぶちあたります。今回だと、破綻する企業に対して労働者は高い水準をするかどうかってところですね。だから、経済モーションだからと言って、臆せず長文がかけてしまうほど考え抜いてほしいですところです
もう1 つの具体例に関しては、説得力を高めるというのはもちろんなのですが、自分が本当に肌で理解してほしいという意味もこめています。断定できませんが、ある程度GM やらトヨタなんていう具体例をまじえたからこそ、この原稿が身近になっているのかなと思います。ICU に所属していた時や大会にジャッジとして協力させてもらった時に、新入生を始めた子に口酸っぱく言っていることの一つとして、「まずは日本語で分かるまで考えて、説明してみて」というものがありますが、こういったことを意図しています。もっとテクニカルな話としては、ポイントをサポートする例とサポートしない例をみつけるとより深いマターを考えるきっかけにもなります。

*例えば、GMの反例、つまり労働者の高い要求によって再建がうまくいかなかったという例に対する反例の一つにJALの話があります。ご存じの通り、JALは破綻しました。その時にメディアが報じたように、退職者の不当に高い福利厚生がその再建の足かせになっているということでした。そのままであれば、GMの二の舞だったのですが、それを恐れた退職者が高い福利厚生を諦めて、再建を後押ししたという美談(?)がありました。一般化して言うと、「昔の失敗に学んで、馬鹿じゃない労働者は安易に高い要求しないよ(だから労働組合は廃止しないで!)」みたいな感じでしょうかね。こういう反例を見つけると一歩進んだリーズニングも得られたりします。あくまで、テクニカルな話として。

2. Be Critical!!
としさんではないですが(苦笑)、僕が言ったことは批判的に受け止めてください。今回なら労働組合のことをある程度書いたわけですが、前述の話だけが労働組合の是非を論じるうえでの話だとは思わないでくださいね。他にも非正規雇用の話だったり、組合の中の政治なんかもイシューですしね。クッキーカッターとかフィロソフィーを学んだ初級者に多い失敗ですが、安易にその枠組にしばられて、「このモーションの議論はかくあるべし」みたいなバイアスもってしまって、他のイシューを見落としてしまうということです。うまい海外ディベーターのクロージングを見てみると、イシューは無限なんじゃないかと時々、錯覚してしまいますよね苦笑 重要な話であったかどうかは、あくまで広くかつ深い議論を行ったかによりま

3.What should you do?
このようにいろいろと書いていますが、読者にとってすべてが有益だとは思っていません。むしろ、害になることがおおいぐらいです。それでも、有益だと思うのは、一つぐらいは読者の方につながることがあるのでないかと、地味に信じているからです。だから、読者の方は、自分なりに必要だと思うところを得るために勝手に取捨選択してくださいね。
気がつけば5000 字を超えていました。まだまだ反省が足りないようですね


*今回は、文の流れを切りたくなかったのであえて参考文献は載せませんでしたので、ここで軽くアナウンスメント

労働組合と賃金の話
マンキュー、『マクロ経済学ⅠⅡ』、東洋経済、2008 年
JALの話
斎藤誠、『競争の作法』、筑摩書房、2010 年
それ以外
ウィキペディア

*なるべく事実や学問的な議論に反したくないので、慎重に根拠に基づいていきたいところですが、時間の制約上、昔読んだ本とか雑誌を掘り返したりするのは難しいので、やや信頼性のかけるリソースであるウィキペディアにお世話なりました。ご容赦ください。以上です。失礼します。



石渡慧一 
国際基督教大学卒業、東京大学公共政策大学院修士1年。2009年度ICUDS部長。Australs 2009 ESLブレイク、 All-Asian 2008 EFLブレイク(なお、この年の北東アジア参加者の中で1位)、NEAO 2009 EFL ブレイク、NEAO 2010 ジャッジブレイク

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