2011年7月18日月曜日

Sping JPDU Tournament 2011 モーション解説(前編)

こんにちは、東京工業大学の小口昂雄です。

今回は4月末に行われたSpring JPDU Tournament(以下「春T」)についての記事を書かせてもらいたいと思います。「なにを今更3か月前のことを…」とか突っ込まないでくださいね!!

僕はこの大会でChief Adjudicator(以下CA)を務めました。なので、CAとして、どんな意図でモーションを出したのか、ジャッジを通してどんな感想を持ったかなどを書いていきたいと思います。ただ、ちょっと前のことなので記憶が定かでないところもあります、そこらへんは勘弁してくださいm(_ _)m

最初にモーションについて。結構普遍的に使えるprincipleとかを含んだモーションを中心にその背景などを解説していきます。


 


まずR1。政治関連のtheme THW introduce a universal basic income.を出しました。このモーションは「大きな政府を支持する理由」(Aff)、「小さな政府を支持する理由」(Neg)を説明できるかを試す意図がありました。

このモーションのポイントはuniversal”というワードです。国民全員に配るんです。おそらく多くの人がこう考えたんじゃないでしょうか→「貧しい人にだけ配ればいいんじゃないの?給料ない人とか…」ごもっともです、リッチな人になんでお金をあげなきゃならないのでしょう?

ここでキーワードになるのが「不確実性」です。

どんなに裕福な人でも、突然転落してしまう可能性があります。例えば東日本大震災で、突然家を失うかもしれません。予期せぬ交通事故にあうかもしれません。ヒルズ族のホリエモンはある日突然逮捕されて無一文になりました(これは自己責任だけど…)。何が起こるかわからない世の中、不確実性に満ちた世の中では、「今」の裕福が必ずしも「未来」の裕福を保証しているわけではありません。

「大きな政府」を支持する理由はここにあります。政府はすべての人々の最低限の生活を保障しなければならない。しかし世の中は不確実性にあふれており、裕福な人を含めて誰しもがおちぶれる可能性がある。だからuniversal”にお金を配ることで最低限のラインを恒久的に保たねばならない、というわけですね。



次にR2Righttheme”THW legalize political contributions from foreigners.”を出しました。モーションを考案し始めていた3月頃、ちょうど前原外相(当時)が在日韓国人の方から献金を受け取ったことが問題になっており、時事ネタとして出してみました。

外国人が政治に影響力を持つことの是非、そしてそれが「お金」であることの是非が争点になります。国政を任せていいかどうかの基準を考えるときは、「非常事態」の際を考えることが有効になると思います。戦争の時、災害の時、不況の時…いざという時にその国を助けようと必死になるか、それとも見捨てるか。見捨てるような人たちにかじ取りを任せてはならない、といった説明ができると思います。



続いてR3、教育がthemeで、エリート教育とaffirmative action の古典2つと”THW publicise the evaluation of teachers”を出しました。元ネタはアメリカの法律。2010年からオバマ大統領の教育改革の一環としてアメリカ各州で導入が進んでいます。(あと…ちょっと最近はやりのジャッジ評価という体制にも似ているモーションです笑。こちらは公開はしていませんけどね。)

先生を評価することは教育の改善につながるのか?が争点になります。
評価されることで、先生は自分の改善点がわかり、かつ公開によって競争意識が芽生えて努力するインセンティブが上がる、そして教育水準が上がるというのがAffの議論。対してNegは先生というステークホルダーのユニークネスの分析が重要になってきます。先生とはいわゆる聖職に近いもの。「ものを教える」という立場上、生徒の規範となり、尊敬されている必要があるというユニークネスがあります。毎年評価の低いダメ先生がいたら、生徒がついていくでしょうか?そんな先生がこのプランで大量に産みだされたら…



予選の最後、R4では国際関連のthemeで出しました。”THW ban tax havens”は古典ですが、みなさんあまりなじみがなかったのでは…?なんだか難しそうなこのモーションは、実はみんな大好き「個人の自由と責任」の話と同じ議論なのです。

非喫煙者「他人に迷惑だからタバコやめろ」(harm to other
喫煙者「楽しみなんすよ、自由にしてじゃん」(freedom of choice)

とほとんど同じ構造を持っているんです。一見複雑な国際モーションも、身近な議論に落とせる点で面白いなと思って出してみました。

Tax havenは資源や産業のない比較的貧しい国(ドバイとかモナコとか)が、外資を呼び込んで発展するときにとる戦略です。所得税や法人税を安く設定することで外国の富裕層の資金を呼び込み、国を潤すわけです。しかしおかげで先進国は富裕層に逃げられて本来もらえるはずだった税収が減ってしまいます。

先進国「うちらの国に迷惑だからtax heavenやめろ」(harm to other
Tax havenの国「うちの成長戦略っすよ、自由にしていいじゃん」(freedom of choice)

ほら、前述の「個人の自由と責任」の話にそっくりですよね。国家単位での自由は「sovereignty」(主権)と言われていますが、基本は同じ構造です。
(他にもマネーロンダリングやテロの資金源となっている問題がありますがここでは割愛)

(次回に続きます。何か質問等あればmarketplace.debate[@]gmail.com ([]を外してください)まで!)


小口昂雄
東京工業大学修士1年、Titech ESS 2010年度チーフ。Spring JPDU Tournament 2011 Chief Adjudicator。4th Supernova Cup準優勝、19th & 22nd JPDU Tournament Quarter Finalist、Elizabeth Cup 2010優勝&Best Speaker。 

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